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「手垢〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

手垢の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
を一冊発見した。それも只の「ツアラトストラ」ではなかった。二月ほど前に彼の売った手垢《てあか》だらけの「ツアラトストラ」だった。彼は店先きに佇《たたず》んだまま....
十円札」より 著者:芥川竜之介
も、――品《ひん》の好《い》い緑に茶を配した裏は表よりも一層見事である。これほど手垢《てあか》さえつかずにいたらば、このまま額縁《がくぶち》の中へ入れても――い....
一房の葡萄」より 著者:有島武郎
の卓《テイブル》の方に走りました。ナイフで色々ないたずら書きが彫りつけてあって、手垢《てあか》で真黒《まっくろ》になっているあの蓋《ふた》を揚《あ》げると、その....
星座」より 著者:有島武郎
けに取られてそれを眺めていなければならなかった。 「教授の手にある講義のノートに手垢《てあか》が溜《た》まるというのは名誉なことじゃない。クラーク、クラークとこ....
青春の逆説」より 著者:織田作之助
思われる。それがたまらなくいやだった。返送されて来た履歴書を書き直す元気もなく、手垢のついたまま別のところへ送る時は、さすがに浅ましい気持になった。 ある日、....
地球を狙う者」より 著者:海野十三
轟博士が、後向きになって、しきりに鞄のなかを整理しているのが見えた。その多くは手垢で汚れきったような論文原稿らしい書類であった。なおも僕は、博士の手さきをみて....
」より 著者:黒島伝治
仕業のようだ。一見すると使い古され、しわくちゃになっていた。しかし、よく見ると、手垢が紙にしみこんでいなかった。皺も一時に、故意につけられたものだ。 郵便局で....
学生と読書」より 著者:倉田百三
きには、これをくりかえし、幾度となく熟読し、玩味し、その解答を検討すべきである。手垢に汚れ、ページがほどけるほど首引きするのこそ指導書である。 広く読書するこ....
日置流系図」より 著者:国枝史郎
衛門は持って来た風呂敷包みを不器用の手付きで拡げたが、中には桑の木で作ったらしい手垢でよごれた半弓と征矢が三本入れてあった。 「どっこいしょ」 と掛け声と一緒....
光り合ういのち」より 著者:倉田百三
る、父の教訓的なポーズともいうべきものがある。 小学校の三年ごろ、私は教科書が手垢で汚れ、すりはげたので、新しい本にかえたくてたまらず、その本を雨あがりの道に....
百喩経」より 著者:岡本かの子
。 ×××を出発してから十何日目かの午後だった。行手の蒼空の裾が一点つねられて手垢の痕がついたかと思う間もなくたちまちそれが拡がって、何百里の幅は黄黒い闇にな....
雪の夜」より 著者:織田作之助
りが洩れて、屋根の雪を照らしていた。まだ眼を覚している照枝を坂田は想った。松本の手垢がついていると思えぬほど、痩せた体なのだ。坂田はなにかほっとして、いつものよ....
錦紗」より 著者:犬田卯
。 すると籠屋は煙管を措き、茶を一杯ぐっと傾けて、さて、表座敷の神棚から一冊の手垢に汚れた和本を下ろして来て、無雑作にたずねはじめた。 「昨日の何時頃だったけ....
夜の構図」より 著者:織田作之助
と、そして美しい想出――それだけで女を想い出していると、もうその女が何人もの男の手垢に触れた女だとは、思えず、嫉妬の感情も何か遠い想いに薄らいでしまっている。が....
書を愛して書を持たず」より 著者:小川未明
。少なくも、その書中から、滋養を摂るのに、それも稀にしかない本でゞもないかぎり、手垢がついていては、不快を禁ずることができないのであります。 書物でも、雑誌で....