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手鏡
「手鏡〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
手鏡の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「党生活者」より 著者:小林多喜二
車がかけられていた。前には仕事をしながら隣りと話も出来たし、キヌちゃん式に前帯に
手鏡を吊《つる》して、時々|覗《のぞ》きこむことが出来たが、今ではポタ/\落ちる....
「食魔」より 著者:岡本かの子
加えて己れを表示する術も覚えた。彼はなりの恰好さえ肩肘を張ることを心掛けた。彼は
手鏡を取出してつくづく自分を見る。そこに映り出る青年があまりに若く美しくして先生....
「煩悩秘文書」より 著者:林不忘
ちょうどその中庭を隔てた向う側の二階の部屋から、障子を細目に開けた番頭の与助が、
手鏡に陽をかざして、その照り返しを巧みに出羽守の眼へ当てたのだった。 たじろい....
「新版 放浪記」より 著者:林芙美子
買う。福神漬を五十匁買う。
帰ってみると、母は朝陽の射している濡れ縁のところで
手鏡をたてて小さい丸髷《まるまげ》をなでつけていた。男は、べっとりと油ぎった顔色....
「明治美人伝」より 著者:長谷川時雨
太《もんた》といった侍のころ深く相愛して、彼女の魂として井上氏の懐に預けておいた
手鏡――青銅の――ために、井上氏は危く凶刃《きょうじん》をまぬかれたこともあった....
「厄年と etc.」より 著者:寺田寅彦
というものを見る機会のない私は、ある朝偶然|縁側の日向に誰かがほうり出してあった
手鏡を弄んでいるうちに、私の額の辺に銀色に光る数本の白髪を発見した。十年ほど前に....
「病房にたわむ花」より 著者:岡本かの子
脱いだ着物を、うちかえしうちかえしては眺むるもの、髪をといたり束ねたりして小さな
手鏡にうつし見るもの、附き添いに、おとなしく手をとられて常人のごとく安らかに芝生....
「灰色の記憶」より 著者:久坂葉子
ることを意識しはじめた。いや、それまででも、会社に通っている頃、何となく化粧して
手鏡にうつる自分の顔を観察してみたり、歩く時の姿勢に気を配ったりしたものだが、本....
「旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
怖気《こわげ》だった。気狂いが、白粉をつけだしたりしてどうなるのかと―― 丸い
手鏡を片手に持って、白粉刷毛《おしろいばけ》でくるくる顔をなでまわしていた曙山さ....
「異質触媒作用」より 著者:寺田寅彦
動きながら三階の窓を片端から順々に照らして行くのである。誰か旧|魚河岸の方の側で
手鏡を日光に曝らしてそれで反射された光束を対岸のビルディングに向けて一人で嬉しが....
「生活」より 著者:林芙美子
に器《うつわ》へうつしてつかう。二年位あるような気がする。原稿用紙の前には小さい
手鏡を置いて、時々舌を出したり、眼をぐるぐるまわして遊ぶ。だけど、長いものを書き....
「市川九女八」より 著者:長谷川時雨
、さんま食べるって――浅漬《あさづけ》もとっといておくれ。」 湯呑《ゆの》みと
手鏡を持って、舞台裏まで附いてゆく静枝にいいつけた。 根岸の家《うち》は茶座敷....
「春」より 著者:岡本かの子
ってまた訊かれる者も、素気なく振り切れない。 鏡を持って行って見せてやる。丸い
手鏡の縁に嵌まって、よく研ぎ澄ました鏡面が、京子の淋しいきちがいと光らせ、傍の者....
「帯広まで」より 著者:林芙美子
の小さい茶餉台が一つ。上の半分の行方が判らない古ぼけた箪笥、ニッケルの脚を持った
手鏡など、どれとして伊代の心を愉しませるものはなかった。畳は何時も湿っていた。伊....
「ロザリオの鎖」より 著者:永井隆
のかなと鏡をのぞいて見ると、私とも思われぬ、ふくれまんじゅうのような無気味な顔が
手鏡いっぱいを埋めている。荒壁のそとを、ごうっと鳴っては生ぬるい嵐が過ぎる。いや....