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抉り
「抉り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
抉りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
貴女にも、ちょうどそれと同じものが仔鹿《かよ》の頸《くび》にあったのです。熊鷹に
抉り抜かれた――というあの一言が、鹿子色をした頸先のほうに、一つの孔《あな》のよ....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
窓から中をのぞいて見る。ずらっとならべた薬種びんの下の調剤卓の前に、もたれのない
抉り抜きの事務椅子に腰かけて、黒い事務マントを羽織った悒鬱そうな小柄な若い男が、....
「空襲葬送曲」より 著者:海野十三
車もあったが、たちまち、人波にもまれて、橋の上から、突き落されたり、米軍の爆弾が
抉りとっていった大孔の底に転がりおとされたりして、車も人も、滅茶滅茶になった。 ....
「夜泣き鉄骨」より 著者:海野十三
、この薬の働きはねえ、人間の柔い皮膚を浸蝕する力がある」 「そうか、柔い皮膚を、
抉りとるのだな」 「それ以上は、言えねえ」 「ンじゃ、先刻みせた注射器の底に残っ....
「恐怖の口笛」より 著者:海野十三
に吸血鬼にやられているようだが、君はどう思うネ」 「ええ、確かに吸血鬼です。この
抉りとられたような頸もとの傷、それから紫斑が非常に薄いことからみても、恐ろしい吸....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
くものから、また触れるものから、過去十余年間の一心の悩みや、生活の傷手が、一々、
抉り出され、また癒されもした。巴里とはまたそういう都でもあった。 かの女は巴里....
「河明り」より 著者:岡本かの子
髪のように振り捌いて、その影の部分だけの海の色を涼しいものにしている。ここだけが
抉り取られて、日本の景色を見慣れた私たちの感覚に現実感を与える。 天井に唸る電....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
に黙劇じみた心理作用が伴ったので、それに力を得て、なおいっそう深く、貴女の心像を
抉り抜くことが出来たのでした。ところで、維納新心理派に云わせると、それを徴候発作....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
ちに、左側にいた女がたちまちに袖をあげてわたしの顔を払ったかと思うと、両の眼玉は
抉り取られてしまった。その痛みの劇しさに悶絶して、その後のことはなんにも知らない....
「戦時旅行鞄」より 著者:海野十三
て、対金方針は確定した。さらばこの上は、如何なる手段によって、彼でか頭の金博士を
抉り殺してしまうべきか。 醤は、幹部を某所に集めて、秘密会議を開くこと連続三十....
「崩れる鬼影」より 著者:海野十三
いているのを見付けたんだ。なにしろ沼の水面が、なんにも浸っていないのに、一部分が
抉りとったように穴ぼこになっていたのだ。地球の上ではあり得ない水面の形だ。それで....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
お兼は走り寄って、附着いて、 「恐しい音がする、何だい、大変な響だね。地面を
抉り取るような音が聞えるじゃあないか。」 いかにも洞の中は、ただこれ一条の大|....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
どもに向って身上噺をせいと仰ッしゃるのは、言わば辛うじて治りかけた心の古疵を再び
抉り出すような、随分惨たらしい仕打なのでございます。幽明の交通を試みらるる人達は....
「地虫」より 著者:小栗虫太郎
も、腹の底まで吐いてしまうよ。そこで、まずこの機械錐だがね。君も見るとおり、一|
抉りというにしては、少々先が鈍すぎるんだ。こんなもので、お悦の眼を醒まさずに、や....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
と痛いのとで眼が眩んだ重蔵は、衣兜から把出した洋刃を閃かして、矢庭に敵の咽喉を一
抉りにした。が、腹立紛れに人を殺したものの、わが眼前に横われる熊吉の屍体を見ては....