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抱擁
「抱擁〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
抱擁の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
した言葉こそ葉子が男の口から確かに聞こうと待ち設けた言葉だったのだ。葉子は乱暴な
抱擁の中にそれを聞くとともに、心のすみに軽い余裕のできたのを感じて自分というもの....
「或る女」より 著者:有島武郎
た倉地は暗い中に葉子の近づく気配を知って、いつものとおり、立ち上がりざまに葉子を
抱擁しようとした。しかし葉子はそうはさせなかった。そして急いで戸を締めきってから....
「星座」より 著者:有島武郎
こしゃく》にさわった。それにしても何んという可憐な動物だ。彼の酷《むご》たらしい
抱擁《ほうよう》の下に、死ぬほどに苦しみ悶えながら彼女の純潔が奪われていく瞬間を....
「人造人間殺害事件」より 著者:海野十三
そうと決心した。 「劉夫人!」 僕は夫人の両手を執《と》って、ひきよせた。恋の
抱擁《ほうよう》と見せかけて、夫人をこの危急の際の仮の防禦物《ぼうぎょぶつ》にし....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
外に道がないのだ。 だからお前は私の全支配の下にいなければならない。お前は私に
抱擁せられて歩いて行かなければならない。 個性に立ち帰れ。今までのお前の名誉と....
「新日本の進路」より 著者:石原莞爾
なしには不可能である。日本の從來の家族は祖父母、父母、子、孫等の縱の系列をすべて
抱擁し、これが經濟單位であり、且つ生活單位でもあつた。この家族制度は日本の傳統的....
「わがまま」より 著者:伊藤野枝
て彼女を覆っているのは、いつ遇うともしれない別れの最後の日に登志子に熱い、接吻と
抱擁とを与えた男だった。登志子の頭にいっぱいに広がった男の顔は彼女の決心をすてさ....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
ことさえもあった。それでも接吻や握手や、または恋愛が要求し神聖視するところの軽い
抱擁さえも試みたことはなかった。彼は彼女の輝いたちぢれ毛のひと筋にも、手をふれた....
「世界怪談名作集」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
れらはたがいに恋の美酒に酔っていたので、その青年はいかにも得意そうに、恋人を固く
抱擁しながら、穏かに同情するような口ぶりで言った。 「僕たちを見たまえ、ラザルス....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
はすべてをキッティに打ち明けた上で、その場で彼女に結婚するように哀願して、彼女の
抱擁によって人力車の幻影を防ごうと考えた。「畢竟」と、私は自分に反駁した。 「人....
「墓」より 著者:秋田滋
た。わたくしは捕ってしまったのです。 わたくしは、その晩、夜一夜、ちょうど愛の
抱擁をした人間が女の体臭を大切にもっているように、その腐肉の悪臭、腐って行くわた....
「紅毛傾城」より 著者:小栗虫太郎
かし、夜になると、二人は抱き合って、裲襠の下で互いに暖め合うのであるが、そうした
抱擁の中で、ややもすると性の掟を忘れようとする、異様の愛着が育てられていった。 ....
「オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
乱気味に嘆息するのだった。 人間を弾奏する――孔雀が最後の別れの際に、九十郎を
抱擁したのは、その目的がまさにそうではないか。さながら、風琴のカップラーを引き出....
「二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
した。その時の私の心持は『罪と罰』を措いて直ちにドストエフスキーの偉大なる霊と相
抱擁するような感に充たされた。 それ以来、私の小説に対する考は全く一変してしま....
「ベートーヴェンの生涯」より 著者:ヴェーゲラーフランツ・ゲルハルト
だが、しかし弱り過ぎている。僕はもう、君を――君と君のロールヒェンとを、心の中で
抱擁することしかできない。君と君の家の一同へ真の友情と愛情とをもって。 君の旧き....