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指呼
「指呼〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
指呼の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
わ」
葉子は岡を二階に案内して、そこのガラス戸越しにあちこちの雪景色を誇りがに
指呼《しこ》して見せた。岡は言葉|少《すく》なながら、ちかちかとまぶしい印象を目....
「二十世紀旗手」より 著者:太宰治
四十のマダムか、レモン石鹸にて全身の油を洗い流して清浄の、やわらかき乙女か、誰と
指呼《しこ》できぬながらも、やさしきもの、同行二人、わが身に病いさえなかったなら....
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
。観念もまたそこで立体的な形をとっていた。 喬《たかし》は彼の心の風景をそこに
指呼することができる、と思った。 二 どうして喬がそんなに夜更けて窓....
「神州纐纈城」より 著者:国枝史郎
ほど四辺の光景は気高く美しい物であった。富士山! そうだその富士の峰は眉に逼って
指呼の間に浮かぶように懸かっている。なだらかな肩、素直な斜面、それが足もとまで流....
「野狐」より 著者:田中英光
のである。十二時頃、千二百円でハイヤーを雇い、M海岸まで帰ったが、そこでわが家を
指呼の間に望みながらも帰る気になれない。家の下に、淫売宿をかねた飲み屋のあったの....
「三十年後の世界」より 著者:海野十三
ところには白冠《はくかん》が、ひときわ明るく光っている。 まちがいなく火星は、
指呼《しこ》の間に見えているのだった。 艇長室では、幹部の間に、火星のうわさが....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
感心してビラミッドへ登ると、頂上に獅子像が頑張っていて、いま見たパノラマの現場は
指呼のうちだ。 天地悠久と雲が流れて、白耳義の野づらはうらうらと燃えている。こ....
「ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
魂の小団を、対立させることだった。私はそれらの魂を、彼らの主長となるべき一英雄の
指呼のままにその周囲に集めたかった。そしてその主長を得るためには、それを創造しな....
「赤格子九郎右衛門」より 著者:国枝史郎
楫取を供に連れて港へ上陸いたしました。 ご承知の通り香港は、支那大陸の九竜とは
指呼の間にござりまして、小さい孤島ではござりますが、其湾内は東洋一、水深く浪平に....
「少年連盟」より 著者:佐藤紅緑
よう」 情けある船長のとりはからいにて、これから一路|平坦砥のごとき海上を談笑
指呼のあいだにゆくことになった。 三月三日! 汽船はぶじオークランド湾についた....
「中支遊記」より 著者:上村松園
きり来るのである。 船が揚子江を上り、上海近くなると知名の新戦場も甲板の上から
指呼のうちにあるのだが、それには狎れた乗客達なのかみな近づく上海の方ばかりに気を....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
、富士川の西に介在せる、五、六千尺の一帯の山脈である。この峠に立ったなら、白峰は
指呼の間に見えよう、信州|徳本峠から穂高山を見るように、目睫の間にその鮮かな姿に....
「墓が呼んでいる」より 著者:橘外男
ころが見えます。加津佐あたりと思しい煙も、見えます……瞳を転ずると、小浜の港が、
指呼のうちに入ります。万里の海風が颯々として、ここに立っていても怒濤の飛沫でから....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
市街と、パルプの真岡工場の数本の大煙突と濛々たるその黒い煙とを、近々とその右舷に
指呼し得る距離まで来て停った。 浪はやはり激しく起伏していた。それでも野田より....
「秋の鬼怒沼 」より 著者:木暮理太郎
られた霜葉の美観は、蓋し此処の圧巻であろう。温泉岳から金精山や前白根に至る諸峰も
指呼の間にある。奥白根の絶巓も何処かでちらと見たようであったが判然しない。 湯....