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掠り
「掠り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
掠りの前後の文節・文章を表示しています。該当する8件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
《かす》り除《のぞか》れて行くように思われた。あたりが闇に入る前に、翁はその幕の
掠り除れた横さまの隙より山の麓らしい大ような勾配を認めたように思った。 草枕、....
「ニッケルの文鎮」より 著者:甲賀三郎
三度目に清水に呼ばれた時、古田の奴、狂言強盗で入りもしない泥坊に、ホンのちょっと
掠り傷を負わされて、ひどい目に遭わされたように見せかけ、残りの原稿をすっかり自分....
「メールストロムの旋渦」より 著者:佐々木直次郎
ませんでしたが。しかし船は少しも水のなかへ沈みそうではなく、気泡のように波の上を
掠り飛ぶように思われるのです。その右舷は渦巻に近く、左舷にはいま通ってきた大海原....
「日輪」より 著者:横光利一
殿へ向って雪崩れて来た。 「奴国の者が宮に這入った。」 「姫を奪いに。」 「鏡を
掠りに。」 騒ぎは人々の口から耳へ、耳から口へと静まった身屋を包んで波紋のよう....
「大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
う一本はどこで取った?」 「これは藪という旗本の宝、木曽街道の松並木で私の相棒が
掠りました」 「相棒の眼星もついているが、それは他人で関係がねえ。……で、四本目....
「痀女抄録」より 著者:矢田津世子
、九銭で貸付けた時は一銭五厘、拾銭のときは二銭という風に中尾に歩分けした。中尾が
掠りを取ることを念に入れておいて、手数料は手取り利子の七分ということにした。 ....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
に腰を払ったが、ヒラッとかわして銀五郎が、無二無三の刃交を挑むと、対手はたちまち
掠りをうけて後退り、耳から顎へかけて赤い一筋――森啓之助は危なくなった。 と―....
「旗岡巡査」より 著者:吉川英治
松は、指の先に薬をすくい取って、何のこだわりもなく、磋磯之介の襟をのぞきこんだ。
掠り傷ではあったが、寒風にふかれて黒く乾いた血が、糊のように下の肌着まで硬ばらし....