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「掩う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

掩うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
羅生門」より 著者:芥川竜之介
》した臭気に思わず、鼻を掩《おお》った。しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を忘れていた。ある強い感情が、ほとんどことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまっ....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
右に切れるとすぐに畑地で、路ばたに石の庚申像《こうしんぞう》が立っている。それを掩うような楓《かえで》の大樹が恰好の日かげを作っているので、半七はそこに立ちどま....
半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
忽ちあっと叫んで座敷へ転げ込んで来て、澹山の膝のうえに半分倒れかかりながら、彼を掩うように両手をひろげた。澹山はすぐに手近の行燈を吹き消した。それとこれと殆ど同....
春の潮」より 著者:伊藤左千夫
の古刹は、東岡なるを済福寺とかいう。神々しい松杉の古樹、森高く立ちこめて、堂塔を掩うて尊い。 桑を摘んでか茶を摘んでか、笊を抱えた男女三、四人、一隅の森から現....
赤外線男」より 著者:海野十三
呪うべき撮影者は、一体誰であるか。 潮はこの映画の写っている間は、頭を下げ顔を掩うたまま、一度も首をあげようとはしなかった。映画が終って、一座の深い溜息と共に....
中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
なた方にも飲ませるからと言って、無理に勧めてそこらの店屋へ案内したが、二人は鼻を掩うてはいらない。さらに杜という相当の料理屋へ連れ込んだが、二人のすがたは他人に....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
にむかって立っている。その傍にはまた高い桜の木が聳えていて、枝はあたかも墓の上を掩うように大きく差し出ている。周囲にはたくさんの古い墓がある。杉の立木は昼を暗く....
」より 著者:池谷信三郎
って軋んで行く気味の悪い響が、この人通りの少い裏通りに轟々と響いていた。彼は耳を掩うように深く外套の襟を立てて、前屈みに蹌踉いて行った。眼筋が働きを止めてしまっ....
」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
。最早別荘は空屋になって居る。雨は次第に強くふって来る。秋の夜長の闇が、この辺を掩うてしまう。別荘の周囲が何となく何時もより広いような心持がする。 その内全く....
獄中消息」より 著者:大杉栄
の配付に、あるいは同志の破獄の助力に、粉骨砕身して奔走するあたり、僕は幾度か巻を掩うて感涙にむせんだ。『新声』のは短かくてよく分らんかも知れんが、もう一度読み返....
探偵夜話」より 著者:岡本綺堂
七ヵ所は近ごろ掘られたもので、その周囲には新しい土が散乱していた。しかもその穴を掩うために大きな草をたくさんに積み横たえて、さながら一種のおとし穴のように作られ....
」より 著者:岡本綺堂
七カ所は近ごろ掘られたもので、その周囲には新しい土が散乱していた。しかもその穴を掩うために大きな草をたくさんに積み横たえて、さながら一種の落し穴のように作られて....
磯部の若葉」より 著者:岡本綺堂
南に向って立っている。その傍にはまた高い桜の木が聳えていて、枝はあたかも墓の上を掩うように大きく差出ている。周囲には沢山の古い墓がある。杉の立木は昼を暗くするほ....
白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
、よく九十九折などと形容するが、ここは実に二百余を数えた。あいにくの霧は南の空を掩うて、雪の峰は少しも見えない。 一里ほどで栂の林となる、ジメジメと土は濡れて....
飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
の形は見えぬ。猶も燈火を彼地此地へ向けている中に、雪は渦巻いて降込んで来た。袖で掩う間も無しに、洋燈の火は雪風に吹き消されて、室の内は俄に闇となった。 忠一は....