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揺ぐ
「揺ぐ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
揺ぐの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
と見るとこれが音に聞えた、燃るような朱の唇、ものいいたさを先んじられて紅梅の花|
揺ぐよう。黒目勝の清しやかに、美しくすなおな眉の、濃きにや過ぐると煙ったのは、五....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
っくりと筋が萎えた風に、折重なるまで摺寄りながら、黙然りで、燈の影に水のごとく打
揺ぐ、お三重の背中を擦っていた。 「島屋の亭が、そんな酷い事をしおるかえ。可いわ....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
識に小児の手を取って、卓子から伸上るようにして、胸を起こした、帯の模様の琴の糸、
揺ぐがごとく気を籠めて、 「そして、貴下は。」 「英吉君には御懇親に預ります、早....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
。 屋の棟|熟と打仰いで、 「あれ、あれ、雲が乱るる。――花の中に、母君の胸が
揺ぐ。おお、最惜しの御子に、乳飲まそうと思召すか。それとも、私が挙動に、心騒ぎの....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
先生、雨です。」という間もなく、硝子窓に一千の礫ばらばらと響き渡って、この建物の
揺ぐかと、万斛の雨は一注して、轟とばかりに降って来た。 金之助も、話の変と、急....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
姿に、つと引寄せられたかと足を其方に向けたのが、駆け寄るお夏の身じろぎに、乱れて
揺ぐ襦袢の紅。ぱッと末枯の路の上に、燃え立つを見るや否や、慌ててくるりと背後向、....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
まいしが、寝みだれていたまいき。 横顔のいと白きに、髪のかかりたるが、冷き風に
揺ぐ、欄干に胸少しのりかけたまいぬ。 「お帰ですか。」 「唯今。」 「遅かったか....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
草の上へ、赤い子供の四人が出て、きちんと並ぶと、緋の法衣の脊高が、枯れた杉の木の
揺ぐごとく、すくすくと通るに従って、一列に直って、裏の山へ、夏草の径を縫って行く....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
かった。 この時は、手の鱗も逆立つまで、しゃっきりと、爪を大きく開ける、と甲の
揺ぐばかり力が入って、その手を扁平く板について、白く乾いた小さな亀の背に掛けた。....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
細りと裙を浮かせて、宙に漾うばかり。さし俯向いた頸のほんのり白い後姿で、捌く褄も
揺ぐと見えない、もの静かな品の好さで、夜はただ黒し、花明り、土の筏に流るるように....
「蠅男」より 著者:海野十三
これはもう遅かった。怪人の乗った自動車は、どうしたわけか次第に右に傾いて二、三度
揺ぐと見る間に、車体が右に一廻転した。下は百メートルほどの山峡だった。何条もって....
「富士」より 著者:岡本かの子
ることがある。ときとしては眺めているうちこどもはむこうの草木に気持を移らせ、風に
揺ぐ枝葉と一つに、われを忘れてゆららに身体を弾ませていることがある。いずれにしろ....
「はなしの話」より 著者:岡本綺堂
声で歌いたいような心持で、甲板をしばらく横行濶歩していると、偶然に右の奥の上歯が
揺ぐように感じた。今朝まで痛みつづけた歯である。指で摘んで軽く揺すってみると、案....
「オフェリヤ殺し」より 著者:小栗虫太郎
のの、それからは夢心地で奈落へ運ばれて行った事だろう。すると、恰度その折、観客は
揺ぐような錯覚を感じて、総立ちになったのだ。然し、孔雀だけは自若としていて、最後....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
橇が氷原を走りはじめたのである。 鯨狼の檻、その餌となる氷漬の魚の箱。ダブダブ
揺ぐようなおのぶサンの肥躯も、今はエスキモーさながらに毛皮にくるまっている。 ....