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撥音
「撥音〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
撥音の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「両国の秋」より 著者:岡本綺堂
」 二人はだまって耳を澄ますと、舞台では見物の興をそそり立てるような、三味線の
撥音《ばちおと》が調子づいて賑やかにきこえた。 「姐さんはまったくこの頃は顔色が....
「古代国語の音韻に就いて」より 著者:橋本進吉
いますが――平安朝以後のものであろうと考えております。昔の学者は平安朝においては
撥音とか促音などがなかったように考えていた人もありますけれども、これは仮名でそう....
「青蛙堂鬼談」より 著者:岡本綺堂
あろうと打ち消したが、張訓はどうしても聞えると言い張った。しかもそれは自分の妻の
撥音に相違ない、どうも不思議なこともあるものだと、かれはその琵琶の音にひかれるよ....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
三の方がかえって照れたくらい、彼女は落ち着き払って踊りの地をひいているのだった。
撥音が寒い部屋に冴え返っていた。 次ぎの部屋で待っていると、師匠はやがて撥をお....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
や怒り猪の――俄に激する数千|騎」突如として山|崩れ落つ鵯越の逆落し、四絃を奔る
撥音急雨の如く、呀と思う間もなく身は悲壮渦中に捲きこまれた。時は涼秋九|月、処は....
「温泉」より 著者:梶井基次郎
浄瑠璃語りの家である。宵のうちはその障子に人影が写り「デデンデン」という三味線の
撥音と下手な嗚咽の歌が聞こえて来る。 その次は「角屋」の婆さんと言われている年....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
の格子が颯と開くと、白兎が一羽、太鼓を、抱くようにして、腹をゆすって笑いながら、
撥音を低く、かすめて打った。 河童の片手が、ひょいと上って、また、ひょいと上っ....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
…格子|前へ流しが来ました。 新町の月影に、露の垂りそうな、あの、ちらちら光る
撥音で、 ……博多帯しめ、筑前絞り―― と、何とも言えぬ好い声で。 (へい、不....
「源氏物語」より 著者:紫式部
劣らないと思われる天才的な人たちで、熱心におやりになる音楽のほうで言えば、宮様の
撥音の少し弱い点は六条院に及ばぬところであると私は思っているのです。ところがあな....
「ドナウ源流行」より 著者:斎藤茂吉
僕の興味をひいた。何となく素朴で、「黒林」の情調とドナウののろい流の趣とに、この
撥音が却って旨く当嵌まるような気がしたのであった。 それから、「黒林」地方の女....
「白木蓮」より 著者:豊島与志雄
澄んでくる。それから、剣を鍛える槌の音と麻衣を打つ砧の音と交錯するあたり、彼女の
撥音は鮮かに冴えてくる。――そのように私が感ずるのも、酔い痴れた悲痛な心情から、....
「貞操問答」より 著者:菊池寛
る舞台は、佐四郎人形を見るようであった。長唄連中は、勿体ないような顔ぶれである。
撥音が冴えて、美しかった。踊りは、もう半ば以上進んでいて、町娘の衣裳でくるくる日....
「安吾の新日本地理」より 著者:坂口安吾
ミ、ム、メ、モ、ユ、ワ」 等、二十にも及ぶものが全く使われていない。 濁音と
撥音では、使われている方が例外のように少数で、わずかに、 「ガ、ザ、ジ、ゾ、ダ、....
「夏の町」より 著者:永井荷風
る。炎天の明《あかる》い寂寞の中《うち》に二|挺《ちょう》の三味線は実によくその
撥音《ばちおと》を響かした。 自分は「長唄」という三味線の心持をばこの瞬間ほど....
「日を愛しむ」より 著者:外村繁
を鳴きあかしたきりぎりすは、先日、死んだ。今、庭には蟋蟀が盛んに鳴いている。短い
撥音を単調に繰り返しているのもいる。語尾を高く張り上げて、旋律の美しいのもいる。....