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撫子
「撫子〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
撫子の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「子供の病気」より 著者:芥川竜之介
病院へ着いたのは九時過ぎだった。なるほど多加志の病室の外には姫百合《ひめゆり》や
撫子《なでしこ》が五六本、洗面器の水に浸《ひた》されていた。病室の中の電燈の玉に....
「妖婆」より 著者:芥川竜之介
、殊に眼が水々しい。――が、どこかその顔立ちにも、痛々しい窶《やつ》れが見えて、
撫子《なでしこ》を散らしためりんすの帯さえ、派手《はで》な紺絣の単衣の胸をせめそ....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
かず、雀の日光に浴しつつ、屋根を自在に、樋の宿に出入りするのを見て、谷に咲残った
撫子にも、火牛の修羅の巷を忘れた。――古戦場を忘れたのが可いのではない。忘れさせ....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
妻下駄が可愛く並んで、白足袋薄く、藤色の裾を捌いて、濃いお納戸地に、浅黄と赤で、
撫子と水の繻珍の帯腰、向う屈みに水瓶へ、花菫の簪と、リボンの色が、蝶々の翼薄黄色....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
野ヶ原の舌長姥。(ともに亀姫の眷属)近江之丞桃六。(工人)桔梗。萩。葛。女郎花。
撫子。(いずれも富姫の侍女)薄。(おなじく奥女中)女の童、禿、五人。武士、討手、....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
子 (指す)あの花は何ですか。(書を渡さんとす。) 博士 存じております。竜胆と
撫子でございます。新夫人の、お心が通いまして、折からの霜に、一際色が冴えました。....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
。 赤沼の三郎は、手をついた――もうこうまいる、姫神様。…… 「愛想のなさよ。
撫子も、百合も、あるけれど、活きた花を手折ろうより、この一折持っていきゃ。」 ....
「古狢」より 著者:泉鏡花
、野茨、卯の花。且つちり乱るる、山裾の草にほのめいた時は、向瀬の流れも、低い磧の
撫子を越して、駒下駄に寄ったろう。…… 風が、どっと吹いて、蓮根市の土間は廂下....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
ていら、昼間見ると桃色の優しい花だ、はて、蓬でなしよ。」 「石竹だっぺい。」 「
撫子の一種です、常夏の花と言うんだ。」 と訓導は姿勢を正して、杖を一つ、くるり....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
ったが、思うに違わず、品の可い、ちと寂しいが美しい、瞼に颯と色を染めた、薄の綿に
撫子が咲く。 ト挨拶をしそうにして、赤ら顔に引添って、前へ出ると、ぐい、と袖を....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
簡では、会場にさし向う、すぐ目前、紅提灯に景気幕か、時節がら、藤、つつじ。百合、
撫子などの造花に、碧紫の電燈が燦然と輝いて――いらっしゃい――受附でも出張ってい....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
門口に、美しい清水が流るる。いや、水のような褄が溢れて、脇明の肌ちらちらと、白い
撫子の乱咲を、帯で結んだ、浴衣の地の薄お納戸。 すらりと草に、姿横に、露を敷い....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
たのだそうで、浜の渚は美しい。…… 金石の浜では見られません。桜貝、阿古屋貝、
撫子貝、貝寄の風が桃の花片とともに吹くなどという事は、竜宮を疑わないものにも、私....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
表紙の画の
撫子に取添えたる清書草紙、まだ手習児の作なりとて拙きをすてたまわずこのぬしとある....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
ゃんと心なしのお太鼓結び。雪の襟脚、黒髪と水際立って、銀の平打の簪に透彫の紋所、
撫子の露も垂れそう。後毛もない結立ての島田|髷、背高く見ゆる衣紋つき、備わった品....