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擦れ
「擦れ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
擦れの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「星座」より 著者:有島武郎
いぶんいろいろな男の手から手に渡ったらしいのに、それだからたまには不愉快なほど人
擦れがしているくせに、どこかさぐり寄るような人なつっこいところも持っている。こう....
「生きている腸」より 著者:海野十三
い顔の上に、ライオンのように房づいた長髪をのせ、世にもかぼそい身体を、てかてかに
擦れた金ボタンつきの黒い制服に包んで駅前にある公衆電話の函に歩みよった。 彼が....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
こへ、膝を折って、畳に突伏すがごとく会釈をすると、お妙も、黙って差置いた洋燈の台
擦れに、肩を細うして指の尖を揃えて坐る、袂が畳にさらりと敷く音。 こんな慇懃な....
「追憶」より 著者:芥川竜之介
に出合った。歩兵は銃を肩にしたまま、黙って進行をつづけていた。が、その靴は砂利と
擦れるたびに時々火花を発していた。僕はこのかすかな火花に何か悲壮な心もちを感じた....
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
はそれが、張出し幕の縫目を漏れて茫と座敷へ映るのであろう……と思う。欄干下の廂と
擦れ擦れな戸外に、蒼白い瓦斯が一基、大門口から仲の町にずらりと並んだ中の、一番末....
「鍵から抜け出した女」より 著者:海野十三
と押してみた。 ギギギギギイ。 鉄格子には狂いが来ているらしく、甲高い金属の
擦れあう音がして、僕の肝を冷やりとさせた。 こいつはいけない! と思ったが、格....
「春昼」より 著者:泉鏡花
鼓に結んだ、白い方が、腰帯に当って水無月の雪を抱いたようで、見る目に、ぞッとして
擦れ違う時、その人は、忘れた形に手を垂れた、その両手は力なさそうだったが、幽にぶ....
「火葬国風景」より 著者:海野十三
言をいった。 彼はいまそこの人混みの中で、どこかで知り合ったに違いない男と不図
擦れちがったのだった。その男というのがまた奇妙な人物だった。非常に背が高くて、し....
「くろがね天狗」より 著者:海野十三
た人影が、不思議にも見当らなかった。ただ――それから一町ほど先で、カチリと金属の
擦れあう疳高い音響が聞えた。 「な、なんだろう――今のは?」 通り魔か? 通り....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
な、ものいいだったが、 「は、」と、呼吸をひいて答えた紫玉の、身動ぎに、帯がキと
擦れて鳴ったほど、深く身に響いて聞いたのである。 「癩坊主が、ねだり言を肯うて、....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
まだ夢中で、嘉吉めは船に居る気でおります、よの。 胴中の縄が弛んで、天窓が地へ
擦れ擦れに、倒になっておりますそうな。こりゃもっともじゃ、のう、たっての苦悩。 ....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
十二人、同じ姿で揃って練ります。が、自分の髪を入髪なしに解ほぐして、その緋の袴と
擦れ擦れに丈に余るってのは、あの婦ばかりだと云ったもんです。一度引いて、もうそん....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
るのを差向けて、 「こいつを一つ遣ってくんねえな。」 立合の手合はもとより、世
擦れて、人馴れて、この榎の下を物ともせぬ、弁舌の爽な、見るから下っ腹に毛のない姉....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
伸びたれば、蛇の衣を避けて行く足許は狭まって、その二人の傍を通る……肩は、一人と
擦れ擦れになったのである。 ト境の方に立ったのが、心持|身体を開いて、頬の皺を....
「卵塔場の天女」より 著者:泉鏡花
く見えるから、念のために申して置くが、売もののそれ等は、市の中を――右へ左へ、肩
擦れ、足の踏交る、狭い中を縫って歩行いた間に見たので、ちょうど立ったのは、乾物屋....