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攀
「攀〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
攀の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「報恩記」より 著者:芥川竜之介
の陰《かげ》をくぐるように、たちまち塀の方へ逃げ出しました。雪のはだれる音、塀に
攀《よ》じ登る音、――それぎりひっそりしてしまったのは、もうどこか塀《へい》の外....
「一夕話」より 著者:芥川竜之介
「君は我々が知らない間《あいだ》に、その中学時代の同窓なるものと、花を折り柳に
攀《よ》じ、――」
「莫迦《ばか》をいえ。僕があの女に会ったのは、大学病院へやっ....
「侏儒の言葉」より 著者:芥川竜之介
すな。
とりわけどうか勇ましい英雄にして下さいますな。わたしは現に時とすると、
攀《よ》じ難い峯《みね》の頂を窮め、越え難い海の浪《なみ》を渡り――云わば不可能....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
を刻み、満面に燃るがごとき怒気を含んで、頂の方を仰ぎながら、靴音を沈めて、石段を
攀じて、松の梢に隠れたのがあった。 これなん、ここに正に、大夫人がなせるごとく....
「絵本の春」より 著者:泉鏡花
… 桃も桜も、真紅な椿も、濃い霞に包まれた、朧も暗いほどの土塀の一処に、石垣を
攀上るかと附着いて、……つつじ、藤にはまだ早い、――荒庭の中を覗いている――絣の....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
前へ立った漁夫の肩が、石段を一歩出て、後のが脚を上げ、真中の大魚の鰓が、端を
攀じっているその変な小男の、段の高さとおなじ処へ、生々と出て、横面を鰭の血で縫お....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
う。取縋る松の枝の、海を分けて、種々の波の調べの懸るのも、人が縋れば根が揺れて、
攀上った喘ぎも留まぬに、汗を冷うする風が絶えぬ。 さればとて、これがためにその....
「革鞄の怪」より 著者:泉鏡花
に挟った。」 「どうしてな。」 と二三人立掛ける。 窓へ、や、えんこらさ、と
攀上った若いものがある。 駅夫の長い腕が引払った。 笛は、胡桃を割る駒鳥の声....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
また袋を結んだり。 そこへ……いまお道さんが下りました、草にきれぎれの石段を、
攀じ
攀じ、ずッと上って来た、一個、年紀の少い紳士があります。 山の陰気な影をう....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
た滑かに巨大なる巌を、みしと切組んだようで、芬と湿りを帯びた階段を、その上へなお
攀上ろうとする廊下であった。いうまでもないが、このビルジングを、礎から貫いた階子....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
あの野郎の狼藉にまかせてあるが、跳梁跋扈の凄じさは、時々切って棄てないと、木戸を
攀じ、縁側へ這いかかる。……こんな荒地は、糸七ごときに、自からの禄と見えて、一方....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
丈よりも高かるべきを思い、白泡のずぶずぶと、濡土に呟く蟹の、やがてさらさらと穂に
攀じて、鋏に月を招くやなど、茫然として視めたのであった。 蘆の中に路があって、....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
もとより後は見も返らず、少年はお雪を抱いたまま、ひだを蹈み、角に縋って蝙蝠の
攀ずるがごとく、ひらりひらりと巌の頂に上った。この巌の頂は、渠を載せて且つ歩を巡....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
落ち来る飛沫を全身に浴びつつ、いかにも悠々たる態度で、巌角を伝わって、上へ上へと
攀じ登って行かれる……。 眼のあたり、斯うした荘厳無比の光景に接した私は、感極....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
わきへ去っては可厭ですよ……一人ですから。」 お桂さんは勢よく乾いた草を分けて
攀じ上った。欣七郎の目に、その姿が雑樹に隠れた時、夫人の前には再びやや急な石段が....