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放す
「放す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
放すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「英雄の器」より 著者:芥川竜之介
一同の口からは、静な笑い声が上った。が、呂馬通は、存外ひるまない。彼は髯から手を
放すと、やや反《そ》り身になって、鼻の高い、眼光の鋭い顔を時々ちらりと眺めながら....
「母」より 著者:芥川竜之介
取って頂戴よ。よう。」
「取れるものか? 踏み台でもすれば格別だが、――何もまた
放すにしても、今|直《すぐ》には限らないじゃないか?」
「だって今直に放したいん....
「報恩記」より 著者:芥川竜之介
。わたしは、――」
「黙れ。甚内は貴様なぞの恩は受けぬ。」
甚内はわたしを振り
放すと、もう一度そこへ蹴倒しました。
「白癩《びゃくらい》めが! 親孝行でもしろ....
「羅生門」より 著者:芥川竜之介
腕である。
「何をしていた。云え。云わぬと、これだぞよ。」
下人は、老婆をつき
放すと、いきなり、太刀の鞘《さや》を払って、白い鋼《はがね》の色をその眼の前へつ....
「仙人」より 著者:芥川竜之介
あなたの出る幕ではありませんよ。まあ、私に任せて御置きなさい。――さあ、左の手を
放すのだよ。」
権助はその言葉が終らない内に、思い切って左手も放しました。何し....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
《ようぼう》の醜い一人の若者が、太い白檀木《しらまゆみ》の弓を握って、時々切って
放す利《とが》り矢であった。
その白羽《しらは》の矢が舞い上る度に、ほかの若者....
「或る女」より 著者:有島武郎
……ただしおれをだましにかかると見当違いだぞ」
そういいながら倉地は葉子を突き
放すようにした。葉子はそれでも少しも平静を失ってはいなかった。あでやかにほほえみ....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
る運命を男らしく肩に担《にな》い上げるために、お前たちは不思議な運命から自分を解
放するために、身にふさわない境遇の中に自分をはめ込むために、闘った。血まぶれにな....
「想片」より 著者:有島武郎
解するものである。
ところが資本主義の経済生活は、漸次に種子をその土壌から切り
放すような傾向を馴致《じゅんち》した。マルクスがその「宣言」にいっているように、....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
彩の露は一入である。 「ここに置かして頂戴よ。まあ、お酒の香がしてねえ、」と手を
放すと、揺々となる矢車草より、薫ばかりも玉に染む、顔酔いて桃に似たり。 「御覧な....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
接に人間に与えた愛子だといっていい。立派な音楽は聴く人を凡ての地上の羈絆から切り
放す。人はその前に気化して直ちに運命の本流に流れ込む。人間にとっては意味の分らな....
「海異記」より 著者:泉鏡花
なんか掻くべいか。 炎というだが、変な火が、燃え燃え、こっちへ来そうだで、漕ぎ
放すべいと艪をおしただ。 姉さん、そうすると、その火がよ、大方浪の形だんべい、....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
あの、吠えて飛ぶ処は、梟の憑物がしよった、と皆|気違にしなさいます。姉さんも、手
放すのは可哀相や言って下さいましたけれど、……周囲の人が承知しませず、……この桑....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
う、円髷の高いのも艶々として、そこに人が居そうな気勢である。 畳から、手をもぎ
放すがごとくにして、身を開いて番頭、固くなって一呼吸つき、 「で、ござりまするな....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
愛する世話女房が、あちこちに発見される。 無論死は直ちに彼女を奴隷的苦境から解
放する。彼女の方では上昇し、之に反して良人の方では下降する。が、愛の絆はこれが為....