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「旅情〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

旅情の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
の灰色をながめながら、かみしめるように船の動揺を味わって見た。遠く遠く来たという旅情が、さすがにしみじみと感ぜられた。しかし葉子の目には女らしい涙は浮かばなかっ....
土曜夫人」より 著者:織田作之助
感に襲われた。そして、夜具の中に見つかった針の先のように、チクリと胸をさす寂しい旅情にも似たこの予感に揺れているうちに、車夫が俥の梶棒をおろしたのは、警察署の裏....
浜菊」より 著者:伊藤左千夫
が、ありありと顔に見える。予も又胸に一種の淋しみを包みつつある此際、転《うた》た旅情の心細さを彼が為《ため》に増すを覚えた。 予も無言、車屋も無言。田か畑か判....
ある崖上の感情」より 著者:梶井基次郎
泊まるんですが、夜中にふと眼をさましてそれからすぐ寝つけないで、深夜の闇のなかに旅情を感じながら窓の外を眺めるんです。空は美しい星空で、その下にウィーンの市が眠....
冬の日」より 著者:梶井基次郎
りをした一軒の家の二階――戸のあらわな木肌は、不意に堯の心を寄辺《よるべ》のない旅情で染めた。 ――食うものも持たない。どこに泊まるあてもない。そして日は暮れ....
過古」より 著者:梶井基次郎
《みは》った。どうしたのだ。まるで覚えがない。何という縞目だ。――そして何という旅情…… 以前住んだ町を歩いて見る日がとうとうやって来た。彼は道々、町の名前が....
路上」より 著者:梶井基次郎
った。 閑散な停留所。家々の内部の隙見える沿道。電車のなかで自分は友人に、 「旅情を感じないか」と言って見た。殻斗科《かくとか》の花や青葉の匂いに満された密度....
青春の逆説」より 著者:織田作之助
をして言ったが、急にリーダーの訳読でもするような口調になって、 「さくら井屋には旅情が漲っている。あそこには故郷の匂いがある。なあ、そうだろう?」と言った。豹一....
眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
鷭が沼の鰌を狙っている形である。山も峰も、雲深くその空を取り囲む。 境は山間の旅情を解した。「料理番さん、晩の御馳走に、その鯉を切るのかね。」「へへ。」と薄暗....
去年」より 著者:伊藤左千夫
離れておって平気なことである。そういえば君は、「何が平気なもんか、万里異境にある旅情のさびしさは君にはわからぬ」などいうだろうけれど、僕から見ればよくよくやむを....
アド・バルーン」より 著者:織田作之助
ます。何か日々の営みのなつかしさを想わせるような風情でした。私はふと濡れるような旅情を感ずると、にわかに生への執着が甦ってきました。そしてふと想いだした文子の顔....
秋深き」より 著者:織田作之助
て、しょんぼり蒲団にもぐりこんだ。とたんに黴くさい匂いがぷんと漂うて、思いがけぬ旅情が胸のなかを走った。 じっと横たわっていると、何か不安定な気がして来た。考....
夫人利生記」より 著者:泉鏡花
の趣があって、健なる神の、草鞋を飾る花たばと見ゆるまで、日に輝きつつも、何となく旅情を催させて、故郷なれば可懐しさも身に沁みる。 峰の松風が遠く静に聞えた。 ....
茶の本」より 著者:岡倉由三郎
を漏らさずには読み得ぬ一節ではあるまいか。 その会心の笑みともいうべきものを、旅情の慰安に筆にしようとした兄のボストンの居室の机の上にはきっと一冊の『茶経』が....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
て、海面油のごとく、また鏡に似たり。ときどき小巒の海上に突起せるを見るは、大いに旅情を慰むるに足る。上等船客西洋紳士十六人中、鬚髭の有無を検するに、有せざるもの....