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早春
「早春〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
早春の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「首が落ちた話」より 著者:芥川竜之介
日清《にっしん》両国の間の和が媾《こう》ぜられてから、一年ばかりたった、ある
早春の午前である。北京《ペキン》にある日本公使館内の一室では、公使館附武官の木村....
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
左衛門は、手もとの煙管《きせる》をとり上げて、つつましく一服の煙を味った。煙は、
早春の午後をわずかにくゆらせながら、明い静かさの中に、うす青く消えてしまう。
「....
「冬の蠅」より 著者:梶井基次郎
かないような夜具の上などを、いじけ衰えた姿で匍《は》っているのである。 冬から
早春にかけて、人は一度ならずそんな蠅を見たにちがいない。それが冬の蠅である。私は....
「雪後」より 著者:梶井基次郎
」 大家の主婦に留守を頼んで信子も市中を歩いた。 三 ある日、空は
早春を告げ知らせるような大雪を降らした。 朝、寝床のなかで行一は雪解の滴《しず....
「家霊」より 著者:岡本かの子
床の母親は急に機嫌よくなった。やっと自儘《じまま》に出来る身体になれたと言った。
早春の日向《ひなた》に床をひかせて起上り、食べ度いと思うものをあれやこれや食べな....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
どうにも仕方がない。独りがいい。独りで気儘に動いているのが一番いい。 薄ら寒い
早春の夜気が、鉄橋の下のレールの上から吹き上ってきて、ひしひしと背中に浸みだした....
「食魔」より 著者:岡本かの子
蔬菜の浅黄いろを眼に染ませるように香辛入りの酢が匂う。それは初冬ながら、もはや
早春が訪れでもしたような爽かさであった。 鼈四郎は今度は匙をナイフに換えて、蔬....
「鶴は病みき」より 著者:岡本かの子
八月下旬以来、昭和二年春まで、足かけ五年も麻川荘之介氏に逢わなかった。昭和二年の
早春、葉子は、一寸した病後の気持で、熱海の梅林が見度くなり、良人と、新橋駅から汽....
「月世界探険記」より 著者:海野十三
いるのだった。彼等は皆、月の地中深く穴居生活をしているのだった。地中はまだ暖く、
早春ぐらいの気候だそうで、そこには空気もあり、また水もあるのだという。その月の生....
「百喩経」より 著者:岡本かの子
に私の腹はくちくなったのだ、だから先の六枚は喰べなくてもよかったのに」 明るい
早春のサンルームで愛の忍堪力の試験。 イエツ教授の娘のマーガレットはこういう実....
「画筆に生きる五十年」より 著者:上村松園
りに京都に行啓あらせられるから、その折りに間に合うようにというお話もありました。
早春二月から、一切の頼まれものはお断わりし、雑事を排して、専心、上納画の下絵にと....
「扉の彼方へ」より 著者:岡本かの子
来た血色のいい肌へ浴衣に丹前を重ねたものを不器用に着て縁に立ちました。硝子戸越の
早春の朝の陽差しを眩しい眼ざしで防ぎながら海を眺めていました。 結婚後一ヶ月目....
「飴チョコの天使」より 著者:小川未明
いったものの喜んで、それをば手に持って、家の外へ遊びに出ました。 まだ、寒い、
早春の黄昏方でありました。往来の上では、子供らが、鬼ごっこをして遊んでいました。....
「鰯」より 著者:岩本素白
の後ろに、裸木の雑木山が、風の無いぽか/\日に照らされて居るのを見ると、如何にも
早春らしい気がする。 町のはずれの越辺川というのに小さい橋が架って居て、それを....
「寺町」より 著者:岩本素白
れ曲り、又坂道になって降りても行く。冬過ぎる頃、土塀の崩れからいち早く芽を出して
早春を感じさせるにわとこと着こなして居た者はないと、亡き母の言った言葉を覚えて居....