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映す
「映す〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
映すの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「十円札」より 著者:芥川竜之介
を見るのは十年来の彼の習慣である。もっともニッケルの時計の蓋《ふた》は正確に顔を
映すはずはない。小さい円の中の彼の顔は全体に頗《すこぶ》る朦朧《もうろう》とした....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
砲の音や小銃の音が、どことも知らず聞え出した。と同時に木々の空が、まるで火事でも
映すように、だんだん赤濁りを帯び始めた。「戦争だ。戦争だ。」――彼女はそう思いな....
「るしへる」より 著者:芥川竜之介
罵《ののし》るらく、「悪魔よ、退《の》け、わが心は DS《でうす》 が諸善万徳を
映すの鏡なり。汝の影を止むべき所にあらず、」と。悪魔呵々大笑していわく、「愚《お....
「白」より 著者:芥川竜之介
体は今こちらへ歩いて来る白の姿を映しました。――はっきりと、鏡のように。白の姿を
映すものはあの客待の自動車のように、到るところにある訣《わけ》なのです。もしあれ....
「或る女」より 著者:有島武郎
日の抜け毛で額ぎわの著しく透いてしまったのが第一に気になった。少し振り仰いで顔を
映すと頬《ほお》のこけたのがさほどに目立たないけれども、顎《あご》を引いて下俯《....
「朱日記」より 著者:泉鏡花
をばらばらと赤く飛ぶのを、浪吉が茱萸を擲つと一目見たのは、矢を射るごとく窓硝子を
映す火の粉であった。 途端に十二時、鈴を打つのが、ブンブンと風に響くや、一つず....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
草ものの商売や。お客から祝儀とか貰うようには行かんぞな。」 「でも、」 と蕈が
映す影はないのに、女の瞼はほんのりする。 安値いものだ。……私は、その言い値に....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
子は分けて、うら問い葉問をせぬものじゃ。」 雲の暗さが増すと、あたりに黒く艶が
映す。 その中に、美しい女は、声も白いまで際立って、 「いいえ、聞きたい。」 ....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
ら、日向で汗ばむくらいだと言った処で、雑樹一株隔てた中には、草の枯れたのに、日が
映すかと見れば、何、瑠璃色に小さく凝った竜胆が、日中も冷い白い霜を噛んでいます。....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
っと、近頃での春らしかったが、夜半に寂然と何の音もなくなると、うっすりと月が朧に
映すように、大路、小路、露地や、背戸や、竹垣、生垣、妻戸、折戸に、密と、人目を忍....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
きは、やがて九十度を越えんずる、夏の日を海気につつんで、崖に草なき赤地へ、仄に反
映するのである。 かくて一つ目の浜は彎入する、海にも浜にもこの時、人はただ廉平....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
特に設けて下すったお浚いの場所ともいうべきものなのでございました。境遇は人の心を
映す種子だったでございましょう! それは丁度絵巻物を繰り拡げるように、物心ついた....
「雪霊続記」より 著者:泉鏡花
う藻脱けて、虚空へ飛んで、倒に下の亡骸を覗いたのかも知れません。 が、その影が
映すと、半ば埋れた私の身体は、ぱっと紫陽花に包まれたように、青く、藍に、群青にな....
「狂人日記」より 著者:秋田滋
きもの。――生きものとはそもいかなるものであろう。それは、思惟によって、万物を反
映する。なお、記憶と意識とによって、世を要約し、世の歴史を自己の中に蔵めている。....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
て、梁を輝かしつつ、丹碧青藍相彩る、格子に、縁に、床に、高欄に、天井一部の荘厳を
映すらしい。 見られよ、されば、全舞台に、虫一つ、塵も置かず、世の創の生物に似....