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春先
「春先〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
春先の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「路上」より 著者:芥川竜之介
わずか》に空の色を透《す》かせた。空は絶えず雲の翳《かげ》に遮《さえぎ》られて、
春先の麗《うら》らかな日の光も、滅多《めった》にさしては来なかった。さしてもまた....
「点鬼簿」より 著者:芥川竜之介
端巾は言い合せたように細かい花や楽器を散らした舶来のキャラコばかりだった。
或
春先の日曜の午後、「初ちゃん」は庭を歩きながら、座敷にいる伯母に声をかけた。(僕....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
つけられないほど狂暴になった。その狂暴を募らせるように烈《はげ》しい盛夏が来た。
春先きの長雨を償うように雨は一滴も降らなかった。秋に収穫すべき作物は裏葉が片端《....
「武蔵野」より 著者:国木田独歩
が頭上でかすかに戦《そよ》いだが、その音を聞いたばかりでも季節は知られた。それは
春先する、おもしろそうな、笑うようなさざめきでもなく、夏のゆるやかなそよぎでもな....
「路上」より 著者:梶井基次郎
の自分の、自然に対して持った情熱の激しさを、今は振り返るような気持であった。 (
春先からの徴候が非道《ひど》くなり、自分はこの頃病的に不活溌な気持を持てあまして....
「食魔」より 著者:岡本かの子
それでも少しの間に一握りほどの雑魚を漁り得る。持って帰ると母親はそれを巧に煮て、
春先の夕暮のうす明りで他人の家の留守を預りながら母子二人だけの夕餉をしたためるの....
「忘れえぬ人々」より 著者:国木田独歩
と独言のようにつぶやいた。なるほど風が大分強くなって雨さえ降りだしたようである。
春先とはいえ、寒い寒い霙まじりの風が広い武蔵野を荒れに荒れて終夜、真っ闇な溝口の....
「三甚内」より 著者:国枝史郎
い、新玉の年の寿に酔い痴れている隙を窺い、金蔵を破って黄金を持ち出した。 「いや
春先から景気がよいぞ。さあ分配金をくれてやるから、どこへでも行って遊んで来い」 ....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
に淋しかったのを覚えている。 私の町は備後の北、出雲路に近く、冬は雪が積もり、
春先きまで炬燵があった。 「深く掘って炭をついでおくれ」 祖母はよく女中に言っ....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
ざる」「いやはや芋類はいけませんな」「万両、まんさく、水仙花、梅に椿に寒紅梅か、
春先の花はようござるな」「そのうち桜が咲き出します」「世間が陽気になりますて」―....
「おびとき」より 著者:犬田卯
て――いま、問題だったのである。 鶏は寒さに向ってからとんと卵は生まなかった。
春先から夏へかけての二回の洪水と、絶えざる降雨のために、田も畑も殆んど無収穫で、....
「いなせな縞の初鰹」より 著者:北大路魯山人
煮が美味いというのも、実は皮も骨もいっしょに煮られているからなのである。 昔は
春先の初がつおを、やかましくいったが、今日では夏から秋にかけてのかつおが一番美味....
「千代紙の春」より 著者:小川未明
きなかったので、この後、そんなに長いこと命が保たれようとは考えられませんでした。
春先であったから、河水は、なみなみとして流れていました。その水は、山から流れてく....
「春風遍し」より 著者:小川未明
春先になれば、古い疵痕に痛みを覚える如く、軟かな風が面を吹いて廻ると、胸の底に遠....
「しんぱくの話」より 著者:小川未明
ったけれど、自然の力は、いつも自由であったからです。現に、数年前のこと、ちょうど
春先であったが、轟然として、なだれがしたときに、幹の半分はさかれて、雪といっしょ....