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春寒
「春寒〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
春寒の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
が出来た。が、同時にまた、参考書と着換えとを入れた鞄のほかに何一つない私自身を、
春寒く思う事も度々あった。
もっとも午後は時折来る訪問客に気が紛《まぎ》れて、....
「路上」より 著者:芥川竜之介
かけて、彼と一しょに森川町の下宿を出た。幸《さいわい》とうに風が落ちて、往来には
春寒い日の暮が、うす明《あかる》くアスファルトの上を流れていた。
二人は電車で....
「将軍」より 著者:芥川竜之介
将軍に従った軍参謀の一人、――穂積《ほづみ》中佐《ちゅうさ》は鞍《くら》の上に、
春寒《しゅんかん》の曠野《こうや》を眺めて行った。が、遠い枯木立《かれこだち》や....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
があります。又いつもの手柄話をするようですが、まあ、お聴き下さい」 嘉永四年は
春寒く、正月十四日から十七日まで四日つづきの大雪が降ったので、江戸じゅうは雪どけ....
「追憶」より 著者:芥川竜之介
子が一人残っている。……まずは生前のご挨拶まで」 僕は返事のペンを執りながら、
春寒の三島の海を思い、なんとかいう発句を書いたりした。今はもう発句は覚えていない....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
してかなりの高価を支払ってはいるが……。 はじめてここへ移って来たのは、三月の
春寒がまだ去りやらない頃で、その月末の二十五、二十六、二十七の三日間は毎日つづい....
「子猫」より 著者:寺田寅彦
はり性の相違ばかりではなくて個性の差に帰せらるべきものかもしれない。 ことしの
春寒のころになってから三毛の生活に著しい変化が起こって来た。それまでほとんどうち....
「地獄の使者」より 著者:海野十三
七時だったよ」 「なるほど」 そういって帆村はオーバーの襟をたてた。濠ばたを、
春寒むの風が吹く。 「社へ出て、ひっかかりの仕事を大体片づけてほっと一息ついたと....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
二坪に足らぬ市中の日蔭の庭に、よくもこう生い立ちしな、一本の青楓、塀の内に年経たり。さるも老木の
春寒しとや、枝も幹もただ日南に向いて、戸の外にばかり茂りたれば、広からざる小路の....
「ドナウ源流行」より 著者:斎藤茂吉
に農夫が幾たりも働いていた。これは信心ぶかくないという証拠にはならなかった。然し
春寒であるから耕し了えた畑はまだ幾枚もない。冬枯の草で蔽われているところを田鼠が....
「短命長命」より 著者:黒島伝治
。が、樹齢は長い。古い大木となって、幹が朽ち苔が生えて枯れたように見えていても、
春寒の時からまだまだ生きている姿を見せて花を咲かせる。 早生の節成胡瓜は、六七....
「漱石氏と私」より 著者:高浜虚子
れば、 後の月ちんばの馬に打ち乗りて 鉄網の中にまします矢大臣 銘を賜はる琵琶の
春寒 意地悪き肥後|武士の酒臭く この連句を作ったことがもとになって、私と漱石....
「郊外生活の一年」より 著者:岡本綺堂
してかなりの高価を支払ってはいるが……。 はじめてここへ移って来たのは、三月の
春寒がまだ去りやらない頃で、その月末の二十五、二十六、二十七の三日間は毎日つづい....
「芙蓉の花にも似た美しい楊貴妃を」より 著者:上村松園
本で申せば天平から奈良朝、あの時代の衣装や調度建築の様式で行く考えです。猶詩には
春寒とありますがこれは夏の時候に改めるつもりです。 (大正十二年)....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
望み、半輪を下辺に生ずるは、やや奇異の感なきあたわず。 三日、晴れ。朝夕はなお
春寒いまだ去らざるを覚ゆ。大塚氏の案内にて公園を一覧す。その傍らに植物園、動物園....