春蘭[語句情報] » 春蘭

「春蘭〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

春蘭の前後の文節・文章を表示しています。該当する11件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
富士」より 著者:岡本かの子
曳き魂魄を匂いの火気に溶かしている。林や竹藪の中に屈《くぐ》まる射干《しゃが》、春蘭のような花すら美しき遠つ世を夢みている。これをしも死から咲き出たものとしたな....
野菊の墓」より 著者:伊藤左千夫
を五六本見つけて帰ってきた。帰りは下りだから無造作に二人で降りる。畑へ出口で僕は春蘭《しゅんらん》の大きいのを見つけた。 「民さん、僕は一寸『アックリ』を掘って....
少女病」より 著者:田山花袋
壁につけて置かれてあって、栗の木の机がそれと反対の側に据えられてある。床の間には春蘭の鉢が置かれて、幅物は偽物の文晃の山水だ。春の日が室の中までさし込むので、実....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
わりをひとりで歩き回りました。いろいろなめずらしい草を集めましたよ――じじばば(春蘭)だの、しょうじょうばかまだの、姫龍胆だの。」 「やっぱり君と一緒に来てよか....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
柳が青く芽をふいた。山茱萸は黄色の花ざかり。赤い蕾の沈丁花も一つ白い口を切った。春蘭、水仙の蕾が出て来た。 雲雀が頻に鳴く。麦畑に陽炎が立つ。 唖の巳代吉が....
銀三十枚」より 著者:国枝史郎
師と邂逅ったロハ台へ、私は一人で腰をかけていた。生暖かい夜風、咽るような花の香、春蘭の咲く季節であった。噴水はすでに眠っていた。音楽堂には燈がなかった。日曜の晩....
血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
て、向かい合っていた。 左門は、いつか、肘を枕にして横になった。 蕾を持った春蘭が、顔の前に生えていて、葉の隙から栞の姿が、簾越しの女のように見えていた。栞....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
。 「お沙汰あるまでこれにお控えください」 蘭の間とでもいうか、絵襖いちめんに春蘭と小禽が描いてある。長さ二十畳の広い部屋である。 茶菓が出る。 人の顔を....
三国志」より 著者:吉川英治
れば、大将軍|袁紹が、門旗をひらいて馬をすすめてくる。黄金の※に錦袍銀帯を鎧い、春蘭と呼ぶ牝馬の名駿に螺鈿の鞍をおき、さすがに河北第一の名門たる風采堂々たるもの....
私本太平記」より 著者:吉川英治
いい。――として彼は今日も、舶載の支那鉢に、ひと株の福寿草を移し植え、それを卓の春蘭とならべて、みずから入れた茶を喫しながら、ひとり閑を養っていた。 姿は、風....
野草雑記・野鳥雑記」より 著者:柳田国男
竜川村 に至っては、たしかに二つの花を掛合せた痕跡があります。爺と婆とは普通には春蘭の花を採ってそう呼びました。元は粗野なる歌があったに相違ありません。甲州の逸....