春霞[語句情報] » 春霞

「春霞〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

春霞の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
青春の逆説」より 著者:織田作之助
る奴がいないからだ!) そう思いつくと、彼ははじめて決然として来た。京都特有の春霞のなかに、キラキラと澄んだ光で輝いている四条通の灯が山の上から眺められた。そ....
永日小品」より 著者:夏目漱石
加減に領承《りょうしょう》した。そこで羽衣《はごろも》の曲《くせ》を謡い出した。春霞《はるがすみ》たなびきにけりと半行ほど来るうちに、どうも出が好くなかったと後....
竹青」より 著者:太宰治
ら眩暈して、それでも尚、この場所から立ち去る事が出来ず、廟の廊下に腰をおろして、春霞に煙る湖面を眺めてただやたらに溜息をつき、「ええ、二度も続けて落第して、何の....
単独行」より 著者:加藤文太郎
扇ノ山へ着いたのは十一時でした。頂上は木が少ないので、眺望はとても雄大です。ただ春霞のため伯耆の大山が見えなかったのは残念でした。扇ノ山を下ってすぐ北の山へ登り....
小田原陣」より 著者:菊池寛
気は野に丘に満ち、快い微風は戦士等の窶れた頬を撫でて居る。ともすれば懶い駘蕩たる春霞の中にあって、十万七千の包囲軍はひしひしと犇き合って小田原城に迫って居る。 ....
平馬と鶯」より 著者:林不忘
れて、平馬は往来へ出た。 自分の背丈もあろうかという大刀を横たえた平馬の姿が、春霞にかすむ野道を結城の町の方へたどって行く。それが点となって消えてしまうまで、....
伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
交って、トンカチリと楊弓聞え、諸白を燗する家ごとの煙、両側の廂を籠めて、処柄とて春霞、神風に靉靆く風情、灯の影も深く、浅く、奥に、表に、千鳥がけに、ちらちらちら....
万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
らぬを我見ても久しくなりぬ天の香具山」(巻七・一〇九六)、「昨日こそ年は極てしか春霞春日の山にはや立ちにけり」(巻十・一八四三)、「筑波根に雪かも降らる否をかも....
初孫」より 著者:国木田独歩
えわれら一家のいかばかり楽しく暮らし候かを、父上母上及びわれら夫妻と貞夫の五人!春霞たなびく野|辺といえどもわが家ののどけさには及ぶまじく候 ここに父上の祖父....
わかれ」より 著者:国木田独歩
。かれは自己が心のさまをながむるように思いもて四辺を見回しぬ。始めよりかれが恋の春霞たなびく野|辺のごとかるべしとは期せざりしもまたかくまでに物さびしく物悲しき....
山の春」より 著者:高村光太郎
ビの頃あぶないのは野火だが、これは又別にかく。 やがて、野山にかげろうが立ち、春霞がたつ。秋の夕方は青い霧が山々をうずめてうつくしく、それをわたくしは「バッハ....
南国太平記」より 著者:直木三十五
ば 武蔵|鐙《あぶみ》に、白手綱 鳥毛の御槍に、黒|纏《まとい》 指物、素槍で、春霞 益満の家から、益満の声で、益満の三味線で、朗らかな唄が聞えて来た。 ....
つづれ烏羽玉」より 著者:林不忘
いうもので、粋《いき》な三味《いと》がほしいような、何ともうれしいけしきである。春霞《はるがすみ》ひくや由緒《ゆかり》の黒小袖。 名にしおう日本橋の大通りだ。....
わが童心」より 著者:佐藤垢石
冬にかけては雪雲と風雲に閉じこめられて、はっきりと姿を現わすことは稀である。春は春霞に、夏は夏霞に面を掩うて、晴れやかに里の人々に国境の寂しさを物語ることは少な....
春雪の出羽路の三日」より 著者:喜田貞吉
たも箱雪車に送られて、後三年の役の遺蹟たる金沢柵址踏査に出かけた。この間約一里。春霞が深くこめて数町先は見えず、眼界の及ぶところことごとく純白な雪の郊野で、シベ....