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「時しも〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

時しもの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
富士」より 著者:岡本かの子
ともなれば、女は自分が先に立ち奴たちを率いて、裾わの田井に秋田を刈った。冬ごもり時しも、旨飯を水に醸《かも》みなし客を犒《ねぎら》う待酒の新酒の味はよろしかった....
吉原新話」より 著者:泉鏡花
気紛れの鳥影の映すように、飜然と幕へ附着いては、一同の姿を、種々に描き出す。……時しもありけれ、魯智深が、大なる挽臼のごとき、五分刈頭を、天井にぐるりと廻して、....
薬草取」より 著者:泉鏡花
王山の半腹、樹木の鬱葱たる中を出でて、ふと夜の明けたように、空|澄み、気|清く、時しも夏の初を、秋見る昼の月の如く、前途遥なる高峰の上に日輪を仰いだ高坂は、愕然....
菎蒻本」より 著者:泉鏡花
蚓のごとし。惟れば嘴の尖った白面の狐が、古蓑を裲襠で、尻尾の褄を取って顕れそう。時しも颯と夜嵐して、家中穴だらけの障子の紙が、はらはらと鳴る、霰の音。 勢辟易....
開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
く……とも知らず、とろんこで「御先祖でえでえ。」どろりと寝て、お京や、蹠である。時しも、鬱金木綿が薄よごれて、しなびた包、おちへ来て一霜くらった、大角豆のような....
悪獣篇」より 著者:泉鏡花
まに反って、肩へ顔をつけて、振返ってあとを見たが、名残惜しそうであわれであった。時しも一面の薄霞に、処々|艶あるよう、月の影に、雨戸は寂と連って、朝顔の葉を吹く....
南国太平記」より 著者:直木三十五
、入ってきた。そして、南玉を見て、微笑して、そっと、人々の背後へしゃがんだ。 「時しもあれや、時こそあれ、一天俄に、掻き晴れて、眺め見渡す隅田川、あれ鳥が鳴く、....
わが工夫せるオジヤ」より 著者:坂口安吾
私は今から二ヶ月ほど前に胃から黒い血をはいた。時しも天下は追放解除旋風で多量のアルコールが旋風のエネルギーと化しつつあった時で....
怪異黒姫おろし」より 著者:江見水蔭
入りの竹法螺を吹くに似通った。 北国街道から西に入った黒姫山の裾野の中、雑木は時しもの新緑に、午過ぎの強烈な日の光を避けて、四辺は薄暗くなっていた。 山神の....
姫柚子の讃」より 著者:佐藤垢石
とはいえまい。しかしながら、姫柚子の一滴は、爛然として鍋のなかに佳饌の趣を呼び、時しも窓外の細雨に、二人は秋声の調べを心に聞いた。鼎中の羮に沸く魚菜の漿、姫柚子....
雪柳」より 著者:泉鏡花
かばかりの普請はなかろう。折から鶏の声の遠く聞えるのが一入里離れた思いがする……時しも家の内遠い処に、何となく水の音……いや湯殿で加減を見るような気配がした。い....
ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
像の腹の鳴るがごとく、時々、ぐわッぐわッと自己の存在と生活を叫んでいる。 この時しも、軽装した助手は、人の輪の前をぐるりぐるりと柄杓を上下に振って廻った。 「....
上野」より 著者:永井荷風
人のしりたる温泉あり。夏は納涼、秋は菊見遊山をかねる出養生、客あし繁き宿ながら、時しも十月中旬の事とて、団子坂の造菊も、まだ開園にはならざる程ゆゑ、この温泉も静....
活人形」より 著者:泉鏡花
れば壁と見紛うばかりなり。ここぞかの人形の室の裏なる密室になんありける。 この時しも得三|等が、お藤を責めて婚姻を迫る折なりしかば、いかにせば救い得られんかと....
五重塔」より 著者:幸田露伴
たる態あわれにて、襤褸衣服にそそけ髪ますます悲しき風情なるが、つくづく独り歎ずる時しも、台所の劃りの破れ障子がらりと開けて、母様これを見てくれ、と猪之が云うにび....