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晩夏
「晩夏〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
晩夏の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「影」より 著者:芥川竜之介
まくら》。
陳彩《ちんさい》の家の客間にも、レエスの窓掛けを垂れた窓の内には、
晩夏《おそなつ》の日の暮が近づいて来た。しかし日の光は消えたものの、窓掛けの向う....
「或る女」より 著者:有島武郎
古藤の事なんぞは忘れてしまって、手欄《てすり》に臂《ひじ》をついたまま放心して、
晩夏の景色をつつむ引き締まった空気に顔をなぶらした。木部の事も思わない。緑や藍《....
「渾沌未分」より 著者:岡本かの子
る右の腕に添え、眩しくないよう眼庇しを深くして、今更のように文化の燎原に立ち昇る
晩夏の陽炎を見入って、深い溜息をした。 父の水泳場は父祖の代から隅田川岸に在っ....
「苦しく美しき夏」より 著者:原民喜
り地上に突離されているようにおもえた。 燃えて行った夏、燃えて行った夏……彼は
晩夏のうっとりとした光線にみとれて、口誦《くちずさ》んだ。夏はまだいたるところに....
「神秘昆虫館」より 著者:国枝史郎
桐窪などにいるのだろうか? ここは桐窪の一画である。 盆地が広く開いている。
晩夏の日光を刎ね返し、天幕が無数に立っている。わけても大きな天幕の中に、さも長閑....
「月夜のあとさき」より 著者:津村信夫
。 秋には坊の食膳にかならず蕈の類が上される。ふかい秋のもの哀しい風味がある。
晩夏の一日、私が奥社に詣でたとき、逆川のほとりの茶店に、新聞紙の上に一杯黄色い小....
「獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
動きをまざまざと思いやると尽きぬ感興があります。 私たちがのっている船は、あの
晩夏の黒海のきらめく碧さと潮風にふかれてのどかでした。クリミヤにしろ、そこに咲く....
「月明」より 著者:豊島与志雄
拶がお上手だから。」 「そう。」 遠いような近いような海の音があたりを包んで、
晩夏の日がじりじり照りつけていた。 「この辺はそれは質朴だから、」とややあって姉....
「轢死人」より 著者:豊島与志雄
る、三人の男が居た。 汽車は始発駅から四哩足らずを走ったばかりの所であったが、
晩夏の曇り日の午後のこととて、皆黙り込んでうとうとしているらしかった。私達も口を....
「肝臓先生」より 著者:坂口安吾
わけだ。アジ文、野口文之助は現役で、つまりアジ家を起した初代であり、不漁になやむ
晩夏、ヤケ半分にイワシを探して大島方面を回航するうちに、時ならぬアジの大群を発見....
「チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
には瓶を並べ、纏絡植物それより生え出でる。舞台の右方はこの壁にて仕切られるなり。
晩夏の午時。石欄より登り来る階段の上にはデジデリオ、アントオニオ、バチスタ、パリ....
「随筆 寄席囃子」より 著者:正岡容
震災の翌年の九月には、牛込肴町の柳水亭という端席へ、独演会の看板を上げた。ひどい
晩夏の土砂降りの晩だったが、私はいそいそ聴きに出かけた。白状してしまうが、この、....
「寄席行灯」より 著者:正岡容
ることが仕方がなかった――。これがあたしの思い出の第一。 本郷の若竹の銀襖を、
晩夏の夜の愁《かな》しみとうたいしは、金子光晴君門下の今は亡き宮島貞丈君だった。....
「チェーホフの短篇に就いて」より 著者:神西清
。 第四楽章。軽快調から漸次緩徐調に。――その夜更け。妹娘が野道を送って来る。
晩夏の星月夜。接吻。……その翌日。既に妹娘はいない。画家が曾ての道を逆にその家か....
「澪標」より 著者:外村繁
の大根の花が咲き、紋白蝶が群り飛んでいる。庭隅には、紫のかっこう花も咲いている。
晩夏の季節の時もある。蔵王山峰から吹き渡って来る風は、既に極めて冷ややかである。....