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晩春
「晩春〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
晩春の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
さみ》を上げて、ざわざわと音を立てるほどおびただしく横行していた。それがいかにも
晩春の夕暮れらしかった。
砂丘《さきゅう》をのぼりきると材木座《ざいもくざ》の....
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
家とこの地峡に関する概述的な記述を急ぎ、この序篇を終りたいと思うのである。事実、
晩春から仲秋にかけては、その原野の奥が孤島に等しかった。その期間中には、一つしか....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
て、この金魚屋の跡取りとして再び育ての親達に迎えられて来たときも、まだこの谷窪に
晩春の花々が咲き残っていた頃だった。 復一は生れて地方の水産学校へ出る青年期ま....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
揺れながら来た。かの女等はそれを避けて畑道へそれた。畑地には、ここらから搬出する
晩春初夏の菜果が充ちていた。都会人のまちまちな嗜好を反映するように、これ等の畑地....
「茸の舞姫」より 著者:泉鏡花
。註をすれば里よりは山の義で、字に顕せば故郷になる……実家になる。 八九年|前
晩春の頃、同じこの境内で、小児が集って凧を揚げて遊んでいた――杢若は顱の大きい坊....
「鐘ヶ淵」より 著者:岡本綺堂
来ることになっている。このときの御成も単に遊覧のためで、隅田のながれを前にして、
晩春初夏の風景を賞でるだけのことであったらしい。 旧暦の四月末といえば、
晩春よ....
「女侠伝」より 著者:岡本綺堂
ら、同じ飯館の老酒をすすり、生姜煮の鯉を食ったとしるされている。芥川氏の来たのは
晩春の候で、槐や柳の青々した風景を叙してあるが、わたしがここに立寄ったのは、秋も....
「決闘場」より 著者:岡本かの子
考察を引き留めるものがあった。でワルトンは不審そうに黙ってアイリスと同じように、
晩春の午後の陽射しを受けて淋しく燻し銀色に輝く白樺の幹や、疎らな白樺の陰影に斜め....
「高原の太陽」より 著者:岡本かの子
子を開けひろげた座敷から木の茂みや花の梢を越して、町の灯あかりが薄い生臙脂いろに
晩春の闇の空をほのかに染め上げ、その紗のような灯あかりに透けて、上野の丘の影が眠....
「晩春」より 著者:岡本かの子
鈴子は、ひとり、帳場に坐って、ぼんやり表通りを眺めていた。
晩春の午後の温かさが、まるで湯の中にでも浸っているように体の存在意識を忘却させて....
「明暗」より 著者:岡本かの子
の片意地となっても表われて智子に頼母しくも暗い思いをさせるのであった。 大たい
晩春もずっと詰まる頃までの二人の生活は前へ前へと進んで行く好奇心や驚異やそれらの....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
に、好い女でさ。」 ここに愛吉が金之助に話したことは、ちょうど二年前、一昨年の
晩春の事で。 愛吉は今に到ってもおとなしくない、その時分もおとなしくなかったが....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
羅浮江上暮春天、習習軽風仏鳥自翩翩。 (九、羅浪江の春帆(南米) 羅浮川のほとり
晩春の空、そよそよと吹く風はあけがたのもやを払う。黄色な川波ははるかに広がって見....
「百姓の夢」より 著者:小川未明
ほおを吹く風も、寒くはなかったのであります。あたりを見まわすと、いつのまにか、
晩春になっていました。 まだ、野原には咲き残った花もあるけれど、一|面にこの世....
「茂吉の一面」より 著者:宇野浩二
の読書の材料豊富感謝奉り候、小説に御精根傾けあらるる事尊敬慶賀無上に御座候、小生
晩春よりかけて元気|無之候、今度元気回復いたしたし、万々頓首、」と述べてある。(....