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暗紅
「暗紅〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
暗紅の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
こに控えていた老人の召使が先に立ち、右手の大階段室に導いた。そこの床には、リラと
暗紅色の七宝模様が切嵌を作っていて、それと、天井に近い円廊を廻っている壁画との対....
「伊太利亜の古陶」より 著者:宮本百合子
か何処かで見たことがあるように思われた。円皿に円形で区切った模様は平凡だが、この
暗紅色マジョリカは、中央に濃い強い藍色で長めな心臓形を持っていた。その心臓形の中....
「帆」より 著者:宮本百合子
だ。 他に船はない。 その三艘だけが、雲のために黝《くろず》み始めた海上を、
暗紅色の帆、オリーヴ色の帆、濡れた鼠の帆と連なって、進行して行く。 それ等が始....
「道標」より 著者:宮本百合子
の頭の方からさしこんでいる雪明りに透かすと、美しい葡萄の実のように重みのある濃い
暗紅の光を閃かせている。
いかにもモスク※の富裕な商人の妻の耳につけられたもの....
「シナーニ書店のベンチ」より 著者:宮本百合子
ニーまで、チェホフの「桜の園」を観ようとつめかけた。 棧敷《ボックス》の内張も
暗紅色、幾百の座席も
暗紅色。その上すべての繰形《モールディング》に金が塗ってある....
「庭の追憶」より 著者:寺田寅彦
偶然ちょっと帰宅したときに、もうほとんど散ってしまったあとに、わずかに散り残って
暗紅色に縮み上がった紅葉が、庭の木立ちを点綴しているのを見て、それでもやっぱり美....
「一粒の粟」より 著者:宮本百合子
点ポツポツを描いても、アッハハハハと卿達《おまえたち》は、大きな声で笑うだろう。
暗紅い稲妻が、ブラックマウンテンに燃立っても、水に跳び込む卿等は同じ筏から。 ....
「長崎の印象」より 著者:宮本百合子
け給うた卵形の御顔を穏かに傾け佇んで在られる。祭壇の後のステインド・グラスを透す
暗紅紫色の光線はここまで及ばない。薄暗い御像の前の硝子壜に、目醒めるようなカリフ....
「C先生への手紙」より 著者:宮本百合子
のようにムラムラと湧いた雲が、性急な馳足で鈍重な湖面を圧包むと、もう私共は真個に
暗紅の火花を散らす稲妻を眺めながら、逆落《さかおと》しの大雨を痛い程体中に浴びな....
「薬」より 著者:井上紅梅
くでもハッキリ見えたが、近寄って来ると、その白い円いものは法被の上の染め抜きで、
暗紅色のふちぬいの中にあることを知った。一時足音がざくざくして、兵隊は一大群衆に....
「古寺巡礼」より 著者:和辻哲郎
坐像である。微妙な色調を持った暗色の地の上に、おぼろに残った黄色の肌や余韻の多い
暗紅の衣が浮き出ている。下には紅蓮の台があって、ゆったりと仏の体をうけ、上からは....
「それから」より 著者:夏目漱石
眺めていると、瘤《こぶ》だらけの柘榴《ざくろ》の枯枝と、灰色の幹の根方に、暗緑と
暗紅を混ぜ合わした様な若い芽が、一面に吹き出している。代助の眼にはそれがぱっと映....