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朝靄
「朝靄〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
朝靄の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
に言いつけた。 ジュ、ジュクと雀の啼声《なきごえ》が樋《とゆ》にしていた。喬は
朝靄《あさもや》のなかに明けて行く水みずしい外面を、半分覚めた頭に描いていた。頭....
「竹青」より 著者:太宰治
二ときばかり飛翔して、ようよう夜も明けはなれて遥か前方に水の都、漢陽の家々の甍が
朝靄の底に静かに沈んで眠っているのが見えて来た。近づくにつれて、晴川歴々たり漢陽....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
隣りの位置に対い合って住む。それらの人たちをも誘い合わせ、峠の上をさして、一同|
朝靄の中を出かけた。 「戦争もどうありましょう。江戸から白河口の方へ向かった東山....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
。亀戸の植木屋はとんだ九太夫役を承ったものだ。 蓮は花の白きをこそ称すれ、彼の
朝靄に包まれて姿朧なる折柄、東の空に旭の初光チラと見ゆるや否、ポッ! ポッ! と....
「ヒルミ夫人の冷蔵鞄」より 著者:海野十三
或る靄のふかい朝―― 僕はカメラを頸にかけて、幅のひろい高橋のたもとに立っていた。
朝靄のなかに、見上げるような高橋が、女の胸のようなゆるやかな曲線を描いて、眼界を....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、海の面にむらむらと蔓った、鼠色の濃き雲は、彼処一座の山を包んで、まだ霽れやらぬ
朝靄にて、もの凄じく空に冲って、焔の連って燃るがごときは、やがて九十度を越えんず....
「ある女の生涯」より 著者:島崎藤村
し日頃信頼する医者の許に一夜を送って、桑畠に続いた病室の庭の見える雨戸の間から、
朝靄の中に鶏の声を聞きつけた時は、彼女もホッとした。小山の家のある町に比べたら、....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
し負う神通二百八間の橋を、真中頃から吹断って、隣国の方へ山道をかけて深々と包んだ
朝靄は、高く揚って旭を遮り、低く垂れて水を隠した。色も一様の東雲に、流の音はただ....
「戯作者」より 著者:国枝史郎
彼はフラフラと歩き出した。足は品川へ向かって行く。 四辺を見れば旅人の群が、
朝靄の中をチラホラと、自分と前後して歩いて行く。駕籠で飛ばせる人もあり、品川宿の....
「郷介法師」より 著者:国枝史郎
では、先ず小僧が眼を覚ました。眠い眼を渋々こすりながら店へ行って門の戸を明けた。
朝靄蒼く立ちこめていて戸外は仄々と薄暗かったが、見れば一本の磔柱が気味の悪い十文....
「光は影を」より 著者:岸田国士
喜……と、彼は、小さな声で、その妹の名を繰り返した。 彼は、夢中で歩を速めた。
朝靄につゝまれた武蔵野の雑木の立木が、見覚えのある荻窪界隈の街道筋を、ぼんやり真....
「地上」より 著者:島田清次郎
洋館の窓を開けて、窓から眺める外の朝景色は何とも言えない。邸内の桜の花雲を超えて
朝靄に包まれた高輪の一台が見渡され、人家の彼方に浅黄色の品川の海が湛えられている....
「回想録」より 著者:高村光太郎
。そして、朝になると本当によかったと思うことが度々であった。よく庭を一杯に籠めた
朝靄に段々明るく陽が射して来る工合が何とも言えないいい気持であった。私の詩などに....
「瀞」より 著者:佐藤垢石
も、三十数年前の昔とは、まるで趣が異なる。殊に立秋後の澄んだ明るい空気を透して、
朝靄が岬の波打ち際に白く、またそして淡紅に輝き、南へ南へと続く漁村と松原が、あし....
「入れ札」より 著者:菊池寛
うとする春の終の頃であった。山上から見下すと、街道に添うた村々には、青い桑畑が、
朝靄の裡に、何処までも続いていた。 関東|縞の袷に、鮫鞘の長脇差を佩して、脚絆....