木の香[語句情報] » 木の香

「木の香〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

木の香の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
箕輪心中」より 著者:岡本綺堂
》えられて、山谷《さんや》がよいの若い男を忌《いや》がらせたという漆《うるし》の木の香《にお》いがここにも微かに残って、そこらには漆のまばらな森があった。畑のほ....
幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
う、爾ならば余も強いて秀子に逢わねば成らぬと云う事はない、再び盆栽室へ退いて、植木の香気に精神を養うて爾して篤と秀子の事を考えて見よう、真に今夜の様な時は、何の....
支倉事件」より 著者:甲賀三郎
石が不規則に押並んで、その間に梵字を書いた卒塔婆の風雨に打たれて黒ずんだのや未だ木の香の新しいのなどが、半破れた白張の提灯などと共に入交っていた。墓石の周囲の赤....
」より 著者:島崎藤村
ろしいようなうれしいような気がして来たとしたのもある。だれに気兼ねもなく、新しい木の香のする炉ばたにあぐらをかいて、飯をやっているところだとしたのもある。 ふ....
一坪館」より 著者:海野十三
ぽい建物ながら、おそろしいほどの金がかかった。しかし焼跡が一つ一つ消えていって、木の香も高い店舗がたつとさすがににぎやかさを加えて、だれもみんなうれしくなった。....
火葬国風景」より 著者:海野十三
していると、八十助は小学校へ上ったばかりのあの物珍らしさに満ちた時代を思い出す。木の香新しい、表面がツルツル光っている机の前に始めて座った時、その隣りに並んでい....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
触ろうとするから、吃驚して引込める時、引っかけて灰が立った。その立つ灰にも、留南木の香が芬と薫る。 覚えず、恍惚する、鼻の尖へ、炎が立って、自分で摺った燐寸に....
大鵬のゆくえ」より 著者:国枝史郎
敷もあろうか古色蒼然といいたいが事実はそれと反対で、ほんの最近に造ったものらしく木の香のするほど真新しい。横手にこじんまりとした床の間があった。二幅の軸が掛かっ....
娘煙術師」より 著者:国枝史郎
をいった。 「ある日私は道に迷って、谷深くはいってゆきました。するとどうでしょう木の香の新しい、幾棟かの家々が建っていて、武士たちがおるではありませんか。講義を....
名古屋スケッチ」より 著者:小酒井不木
らう。 中村遊郭 たとひ中村遊郭が、東洋一の建築美を誇つても、さうして今なほ木の香新らしく嫖客の胸を打つても、やはり遊郭は旧時代の遺物である。いつそ古ければ....
不在地主」より 著者:小林多喜二
気持悪く脛に当る細道を抜けて、通りに出た。道の傍らには、節を荒けずりした新らしい木の香のする電柱が、間隔を置いて、何本も転がさっていた。――もうしばらくで、この....
脊の低いとがった男」より 著者:小川未明
そんないい小刀を持つことのできた太郎は、幸福でありました。いつも、鉛筆の先は、木の香がするようにきれいに削られていて気持ちがよかったからです。太郎は、かばんの....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
詩や歌を作る時のように、コツコツとやっている。その事に遊びほれるのだ。色々の草や木の香いを嗅ぎ分けながらだよ。そこがうれしいじゃないか。いったい感冒の薬は杏仁水....
」より 著者:織田作之助
黄昏であった。 ひっそりとした寺がいくつも並んだ寺町を通る時、ぱっと暗闇に強い木の香がひらめいた。木犀であった。豹一は眩暈がした。既に初めてのった人力車に酔う....
春泥」より 著者:久保田万太郎
もかも凍てついていた。――いまの時間でまだ霜柱がとけなかった。」 あたらしい、木の香の濃い塔婆にかこまれ、贔負さき客さきからの心をこめた美しい……というよりは....