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杙
「杙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
杙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「逆行」より 著者:太宰治
とっさのうちに百姓の片脚をがぶと噛んだ。脚は固かった。路傍の白楊《はこやなぎ》の
杙《くい》であった。私は泥にうつぶして、いまこそおいおい声をたてて泣こう泣こうと....
「花火」より 著者:太宰治
って、岸に上った。「帰ろう。」 節子はうなずいた。 翌朝、勝治の死体は、橋の
杙《くい》の間から発見せられた。 勝治の父、母、妹、みんな一応取り調べを受けた....
「彼は昔の彼ならず」より 著者:太宰治
の空地へ出た。原っぱの霜は清浄であった。月あかりのために、石ころや、笹の葉や、棒
杙《ぼうぐい》や、掃き溜めまで白く光っていた。 「友だちもないようですね。」 「....
「幻談」より 著者:幸田露伴
して役を取上げられまする、そうすると大概|小普請《こぶしん》というのに入る。出る
杙《くい》が打たれて済んで御《お》小普請、などと申しまして、小普請入りというのは....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
の梢へ暗くなる、ちょっと人足の途絶え処。 東へ、西へ、と置場処の間数を示した標
杙が仄白く立って、車は一台も無かった。真黒な溝の縁に、野を焚いた跡の湿ったかと見....
「東京要塞」より 著者:海野十三
は例の工事場で働いていたとき、その中ではないが、どこかその附近でもって、しきりに
杙打ち作業をやっているらしい地響を聞いたことであった。 それについて、彼は今ま....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
廂が下った小家の軒下暗い中から、ひたひたと草履で出た。 声も立てず往来留のその
杙に並んで、ひしと足を留めたのは、あの、古井戸の陰から、よろりと出て、和尚に蝋燭....
「犬」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
であった。所々丘のように高まって居る。また低い木立や草叢がある。暫く行くと道標の
杙が立って居て、その側に居酒屋がある。その前に百姓が大勢居る。百姓はこの辺りをう....
「心の王者」より 著者:太宰治
争って、手のある限りの者は右往左往、おのれの分前を奪い合った。農民は原野に境界の
杙を打ち、其処を耕して田畑となした時、地主がふところ手して出て来て、さて嘯いた。....
「接吻」より 著者:神西清
に命令されました。」 曹長の報告はまだ続いて、カルポフが喇叭の新しい紐と天幕の
杙を忘れたとか、将校の方々が昨夜フォン=ラッベク将軍のお邸へ招ばれて行かれました....
「決闘」より 著者:神西清
を組んだ危なっかしい橋がそこの流れに渡してあり、ちょうどその向い岸に、四本の低い
杙を脚にした納屋がある。これは玉蜀黍を乾す小屋で、どうやらお伽噺に出てくる鶏足の....
「熱情の人」より 著者:久保栄
つ、隠忍自重して多難な新劇劇場の経営に努力し、他日の大成に資すべき幾本かの貴重な
杙を打って行かれたところに、先生の劇場人としての現実的な悩みと偉大な感情と意志と....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
うやら広い地面があって、
それをわたくし共が戴くのだそうですね。
先を尖らせた
杙も、測量に使う
長い鎖も、ここにあります。
だがなぜ呼ばれたのだか、
実はもう....
「女房ども」より 著者:神西清
って跪きなさい。』けれども彼女は一言も口を利きません。瞬きひとつしないのです。棒
杙相手に物を言うようなものです。 「その翌る日、※ーシャを掘り起して解剖して見る....
「古事記」より 著者:太安万侶
に入れたら宜いでしよう。 また、 水のたまつている依網《よさみ》の池の 堰
杙《せきくい》を打《う》つてあつたのを知《し》らずに ジュンサイを手繰《たぐ》つ....