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「束の間〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

束の間の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
い事はありません。自分の机の上に来信を見いだした時はなおさらの事です。僕は手紙の束の間《あいだ》をかき分けてあなたの手跡を見いだそうとつとめました。しかし僕はま....
妖術」より 著者:泉鏡花
からりとして、水に沈んだ硝子函、車掌と運転手は雨にあたかも潜水夫の風情に見えて、束の間は塵も留めず、――外の人の混雑は、鯱に追われたような中に。―― 一帆は誰....
海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
来して居り、政府は無策無為。そして新円は、旧円六百億円を二百億円にくいとめたのも束の間にて、今や二百五十億。毎日四億円ずつ放出されている現状では月末には二百八十....
灯台鬼」より 著者:大阪圭吉
ひらを見せて下さい」 と案の定切り出した。これは面白くなって来た、と思ったのも束の間、やっぱり風間老人のてのひらにも胼胝は出来ていなかったと見えて、やがて老看....
食魔」より 著者:岡本かの子
、こういう景致や物音に遠巻きされながら、それに煩わされず、逃れて一人うとうとする束の間を楽しいものに思い做した。腹に満ちた咀嚼物は陽のあたためを受けて滋味は油の....
猿飛佐助」より 著者:織田作之助
りしていると、忽然として現われ、 「忍術には屁の音は要らぬものじゃが、放屁走尿の束の間にも、夢幻の術を行うという所を見せるために、わざと一発放ってみたのじゃ」 ....
春昼」より 著者:泉鏡花
らんほどのものは、五十里、百里、三百里、筑紫の海の果からでも、思いさえ浮んだら、束の間に此処に来て、虚空に花降る景色を見よう。月に白衣の姿も拝もう。熱あるものは....
火葬国風景」より 著者:海野十三
彼は人事不省から醒めて、生きている悦びを、やっと感じたばかりだったが、その悦びは束の間に消え去った。いくら生きていても、棺桶の中に入れられていては、どうしようも....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
ちらも堅牢な新船でございました。 『一|同が今日の良き船出を寿ぎ合ったのもほんの束の間、やや一|里ばかりも陸を離れたと覚しき頃から、天候が俄かに不穏の模様に変っ....
木曽の旅人」より 著者:岡本綺堂
だんに薄れて来て、彼はやはり普通の旅人であろうと重兵衛は思い返した。しかしそれも束の間で、旅人はまたこんなことを言い出した。 「これから山越しをするのも難儀です....
『十八時の音楽浴』の作者の言葉」より 著者:海野十三
し、そして拡大した。戦争前、今こそ科学小説時代が約束されたと僕が思ったのもほんの束の間のことで、編集者の狼狽でもって、意味もなく、この約束もどこかにけし飛んでし....
経帷子の秘密」より 著者:岡本綺堂
た。年寄りをいたわってやって、よい功徳をしたようにお峰親子は思った。しかもそれは束の間で、老婆と入れ代って駕籠に乗ったお妻は忽ちに叫んだ。 「あれ、忘れ物をして....
軽女」より 著者:上村松園
でいたお軽は、内蔵助の訪問をうけて、どのように悦んだことであろう。しかし、それも束の間で、いよいよ明日は、 「岡山の国家老池田玄蕃殿のお招きにより岡山へ参る」 ....
活人形」より 著者:泉鏡花
たちまち悩乱して、腸絞る苦しさにさては毒をば飲まされたり。かの探偵に逢うまでは、束の間欲しき玉の緒を、繋ぎ止めたや繋ぎ止めたやと絶入る心を激まして、幸いここが病....
茸をたずねる」より 著者:飯田蛇笏
じい音と共に濠々と立つ白煙を舐め尽して終う。人の輪が少し後ろへ下って、各々の顔に束の間の歓びの情が溢れて見える。 知らず知らず時が過ぎ去って、樹間を立ち騰る薄....