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「来し方〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

来し方の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
突貫紀行」より 著者:幸田露伴
《く》れ残りて白く見ゆるに、都鳥も忍《しの》ばしく、父母すみたもう方、ふりすてて来し方もさすがに思わざるにはあらず。海気は衣を撲《う》って眠《ねむ》り美ならず、....
クララの出家」より 著者:有島武郎
心持ちになって、クララは部屋の隅の聖像の前に跪いて燭火を捧げた。そして静かに身の来し方を返り見た。 幼い時からクララにはいい現わし得ない不満足が心の底にあった....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
実に幾千万の人の生きもし死にもする広い世の中につながっているからであった。彼女は来し方行く末を考えて、ひとりでさんざん哭いたこともある。そのたびに彼女の心は幼い....
般若心経講義」より 著者:高神覚昇
ます。 「世に智慧ある人の病中ほど、あさましく、物苦しいことはなきことなるぞや。来し方、行く末のことなども際限なく思い続け、看病人の好悪などをとがめ、旧識同伴の....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
に蒼みを帯びて、両側より枝|蔽える木の葉の中より走り出でて、颯と橋杭を潜り抜け、来し方の市のあたり、ごうごうと夜深き瀬の音ぞ聞えたる。 わが心は決らで、とこう....
丹下左膳」より 著者:林不忘
って部屋へ通ったお艶。 変わった姿にともすればもよおす涙が、今夜はひとしお過ぎ来し方ゆく末などへ走って、元相馬藩士和田宗右衛門というれっきとした武士の娘がなん....
旅人の言」より 著者:豊島与志雄
土地、私が生れた黒い土地、それが私の心を呼び戻すからだ。行く方の空が遠くなって、来し方の空が近くなるだろう。その夕映の空の下にやさしい子守の唄が響く。疲れた私に....
雪のシベリア」より 著者:黒島伝治
うに連っていた。 彼等は、ペーチカを焚いて、室内に閉じこもっていた。 二人は来し方の一年間を思いかえした。負傷をして、脚や手を切断され、或は死んで行く兵卒を....
春昼後刻」より 著者:泉鏡花
を跨がねばならぬほど狭いので、心から、一方は海の方へ、一方は橿原の山里へ、一方は来し方の巌殿になる、久能谷のこの出口は、あたかも、ものの撞木の形。前は一面の麦畠....
駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
いとわれとわが心を欺いてわずかに良心の呵責を免れていたが、今宵この月の光を浴びて来し方の詐欺に思い至ると、自分ながら自分の心のあさましさに驚かれる。 私は今改....
余齢初旅」より 著者:上村松園
昼頃にはもう上海へつくことになっていた。 夜があけて、船室から甲板に出てみると来し方の海水は青々としているけれども、行く手の海は赤い色をしている。それまでは島....
二十歳のエチュード」より 著者:原口統三
ろ向きになって、坂の此方を見下ろした。彼の背後にある絶壁をしきりに気にしながら、来し方を眺め渡して溜め息をついた。しだいしだいに彼は自分の背後が恐ろしくなり、一....
雪の武石峠」より 著者:別所梅之助
が》しめすものは、露ないので、私はかえる方がよいと言い出した。三時、私たちはもと来し方へと引きかえした。賽《さい》の河原《かわら》で蜜柑《みかん》をたべて、降り....
飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
重太郎は既う耳にも入れなかった。これから直にお葉の行方を追う意であろう、彼は旧来し方へ直驀地に駈けて行った。 お葉は虎ヶ窟から虎口を逃れた。 逃れたのは嬉....
春の大方山」より 著者:木暮理太郎
て私等の来るのを待っていた。これからは路も明瞭である。十時頃大きな崖の縁に出た。来し方を顧ると、枝という枝を霧氷に飾られた大小二本の樅の間から、雲表に聳ゆる富士....