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松の間
「松の間〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
松の間の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
閣《てんしゅかく》を心に描かせた。昼見るといつも天主閣は、蓊鬱《おううつ》とした
松の間に三層《さんぞう》の白壁《しらかべ》を畳みながら、その反《そ》り返った家根....
「影」より 著者:芥川竜之介
――房子だけは――」
一瞬間の後陳彩は、安々《やすやす》塀を乗り越えると、庭の
松の間をくぐりくぐり、首尾《しゅび》よく二階の真下にある、客間の窓際へ忍び寄った....
「蜃気楼」より 著者:芥川竜之介
なかった。が、僕の心もちはO君にははっきり通じたらしかった。
そのうちに僕等は
松の間を、――疎《まば》らに低い
松の間を通り、引地川《ひきじがわ》の岸を歩いて行....
「吉良上野の立場」より 著者:菊池寛
と思った。 (しかし、伊達にききにやるのも面目にかかわるし……) そう思って、
松の間の廊下へ出たとき、上野が向うから歩いて来た。 「しばらく」 上野は、じろ....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
かと思うが、矢張浅間の山つづきだ、ホラ、小諸の城址にある天主台――あの石垣の上の
松の間から、黒斑のように見える山林の多い高い傾斜、そこを私達は今歩いて行くところ....
「家」より 著者:島崎藤村
橋本さんの叔父さん?」老松は手を打って笑った。 「叔父さんは好かった」と小金と老
松の間に居る年増も噴飯した。 「真実の叔父さんだよ」と正太は遮ってみたが、しかし....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
ろとついて登って行って手をあげているさまが、秋の晴れた日の空気をとおしてまばらな
松の間から見えた。その松原からは利根川の広い流れが絵をひろげたように美しく見渡さ....
「谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
高を、先へ駈けぬけるつもりで、人夫だけを別れ道に待たせて置いて、嘉代吉と二人で偃
松の間をむやみに走った。 眼の下に遠く梓川は、S字状に蜿ねっている、私の足音に....
「不尽の高根」より 著者:小島烏水
異香をくんじているが、路が御庭へ一里、大沢へ約二里と、森の中へ深いりすると、落葉
松の間から、コメツガや、白ビソの蔭から、ひょろ長い丈の石楠花が、星のようにちらつ....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
果てず灯は見えぬが、その枝の中を透く青田越しに、屋根の高いはもう我が家。ここの小
松の間を選んで、今日あつらえた地蔵菩薩を―― 仏様でも大事ない、氏神にして祭礼....
「大正女流俳句の近代的特色」より 著者:杉田久女
荘がかった避暑館へ傭われた水汲女が急な門坂を汗しつつ、にない登る有様と階級意識。
松の間の冬日にとまる電車かな かな女 ストーブや棕櫚竹客の椅子にふれ み....
「名人地獄」より 著者:国枝史郎
の紋服を召した、綺麗な綺麗なお侍様が、泊まっておいでのご様子だね」「そのお方なら
松の間の富士甚内様でございましょう」「おお富士様とおっしゃるか。稀に見るご綺麗な....
「月光の下」より 著者:田中貢太郎
。 村は荒涼としていた。松林の松は倒れ、畑は河原のようになっていた。女は倒れた
松の間を潜って歩いた。そして、己の家の前の方へ往ったが、その方へは曲らずにそのま....
「書記官」より 著者:川上眉山
けるごとく辰弥は椅子を離れ、庭に下り立ちてそのまま東の川原に出でぬ。地を這い渡る
松の間に、乱れ立つ石を削りなして、おのずからなる腰掛けとしたるがところどころに見....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
り青磁の香炉を捧げて天外の風流を楽しんでいるのは浅間山であろう。 南に向って偃
松の間を縫いながら草原を十四、五間登った。それから下り気味に岩壁の根方を廻って、....