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「松脂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

松脂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
」より 著者:芥川竜之介
しおかぜ》が明かに語っている。陳はさっきからたった一人、夜《よ》と共に強くなった松脂《まつやに》の※《におい》を嗅ぎながら、こう云う寂しい闇の中に、注意深い歩み....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
寞が支配していた。 彼は舷《ふなばた》に身を凭《もた》せて、日に蒸《む》された松脂《まつやに》の※《におい》を胸一ぱいに吸いこみながら、長い間|独木舟《まるき....
梓川の上流」より 著者:小島烏水
《あらと》のような急湍《きゅうたん》も透徹して、水底の石は眼玉のようなのもあり、松脂《やに》の塊《かた》まったのも沈み、琺瑯《ほうろう》質に光るのもある、蝶は、....
真景累ヶ淵」より 著者:三遊亭円朝
は空しくなるというので、惣次郎が常に帯《さ》して出ます脇差の鞘を払って、其の中へ松脂《まつやに》を詰めて止めを致して置きました、実に悪い奴でございます。惣次郎は....
富士」より 著者:岡本かの子
。瓜わらべにちょっと頬ずりして土に置いた。瓜わらべの和毛《にこげ》から放つらしい松脂の匂いが翁の鼻に残った。 翁はしばらく息を入れていた。瓜わらべは小竹の中へ....
白蟻」より 著者:小栗虫太郎
れを時江さんに要求いたしますと、あの方は、手渡しされた早鉄漿《はやがね》(鉄漿を松脂に溶いた舞台専用のもの、したがって拭えばすぐに落ちるのである。)の壺を、その....
岩石の間」より 著者:島崎藤村
と学士とは懐古園の方へ並んで歩いて行った。学士は弓を入れた袋や、弓掛《ゆがけ》、松脂《くすね》の類《たぐい》を入れた鞄《かばん》を提げた。古い城址《じょうし》の....
中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
うるのほかには能がないように見られた。 しかも彼等はなかなかの曲者で、ひそかに松脂を買って来て、それを粉にして練りあわせ、紙にまいて火をつけて、夜ちゅうに高く....
武装せる市街」より 著者:黒島伝治
烏が横腹に夕陽を浴びて、嬉しげに群れとんでいた。 工場は、塵埃と、硫黄と、燐、松脂などの焦げる匂いに白紫ずんでいぶっていた。 少年工と少女工が、作業台に並ん....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
その時、寿平次は「今一手」と言いたげに、小屋の壁にたてかけた弓を取りあげて、弦に松脂を塗っていた。それを見ると、得右衛門も思い出したように、 「伊那の方でもこれ....
藤棚の陰から」より 著者:寺田寅彦
出しが忽然として記憶の水準面に出現する。そうして、その引き出しの中には、もぐさや松脂の火打ち石や、それから栓抜きのねじや何に使ったかわからぬ小さな鈴などがだらし....
艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
白粉くさい匂いがあるように、秋の松山にはまた松山みずからの体臭がある。日光と霧と松脂のしずくとが細かく降注ぐ山土の傾斜、ふやけた落葉の堆積のなかから踊り出して来....
亡び行く江戸趣味」より 著者:淡島寒月
。それから今でも奥州方面の山間へ行くとある「でっち」というものが使われた。それは松脂の蝋で練り固めたもので、これに類似した田行燈というものを百姓家では用いた。こ....
金の十字架の呪い」より 著者:チェスタートンギルバート・キース
ななだらかな傾斜なのでだんだんに暗さをます以外にはさして困難ではなかった。彼等は松脂のように黒い磨り減らしたトンネルの中に動いてるのがわかった。そして彼等が上の....
高原の太陽」より 著者:岡本かの子
る。あちこちの松の立木が軽く緑を吹きつけたように浮いている。拍手の音がする。温い松脂の匂いがする。 「あんまりいい気持ちで眠たくなっちまう……」 ついかの女は....