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枯淡
「枯淡〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
枯淡の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「仇討三態」より 著者:菊池寛
の旅に出て、越の御山を志して来たのである。 瞋恚の念が、洗われた惟念の心には、
枯淡な求の道の思いしか残っていなかった。長い長い敵討の旅の生活が、別人の生涯のよ....
「武装せる市街」より 著者:黒島伝治
、彼に、頗る好都合だった。暫らく、前線に出て、すゞを見なかったことは、彼の気持を
枯淡にせしめるどころかむしろ、五十の情熱をかり立てるのだった。 彼の、すゞに対....
「狂乱」より 著者:近松秋江
に浸りながら早くから寝に就いた。七月の初めからほとんど三カ月に近い、高い山の上の
枯淡な僧房生活の、心と体との飢渇から、すっかり蘇生したような気持になった。外では....
「艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
わりに何一つ物らしい物を蓄えないで、夏も冬もたった一枚の衣でおっ通したほど、無慾
枯淡な生涯を送ったものだった。腹が空くと、衣の裾をからげて水に入り、海老や、貝と....
「楢重雑筆」より 著者:小出楢重
湧き出して来るわけだ。 これに反して老衰、月経閉止、生殖不能、栄養不良、停滞、
枯淡、棺桶、死、貧乏、不運、消極といった方面からはあまり湧かないように思われる。....
「灰色の記憶」より 著者:久坂葉子
や自信を失ってしまっていた。情熱など更になかった。今まで着ていた衣をぬぎすてて、
枯淡の世界へはいるのだと気付いた。いさぎよくはいってゆくのでもなく、そうかと云っ....
「飛騨の顔」より 著者:坂口安吾
装うている心境の臭気は作品にハッキリ現れている。その作品がいかにも世をすてた人の
枯淡、無慾の風格をだそうとしているだけに、実は甚だ俗悪な慾心や気取りが作品のクモ....
「私は誰?」より 著者:坂口安吾
かというと、今から凡そ十年、いや二十年ぐらい前だろう、私が「作品」という雑誌に「
枯淡の風格を排す」という一文を書いて、徳田秋声先生をコキ下したところ、先輩に対す....
「未来のために」より 著者:坂口安吾
いる。志賀直哉を文学の神様と称したり、宇野浩二を文学の鬼と称したり、また、秋声を
枯淡の風格とか神品と称し、そこに見られる文学精神とか精進とか、要するに過去の複写....
「人生における離合について」より 著者:倉田百三
ならば、事あるごとに身に沁みることが多く考え深くさせられる。対人関係について淡白
枯淡、あっさりとして拘泥せぬ態度をとるということも一つの近代的な知性ではあるが、....
「近藤浩一路氏」より 著者:芥川竜之介
さえすれば、一頁の漫画が忽ちに、一幅の山水となるのは当然である。 近藤君の画は
枯淡ではない。南画じみた山水の中にも、何処か肉の臭いのする、しつこい所が潜んでい....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
とであったろう。権田原先生の教え子に対する愛には、深い思想があり、寛厚で、しかも
枯淡な人格のひらめきがあった。そしてその愛の表現には、次郎が強いて拒もうとする、....
「漱石氏と私」より 著者:高浜虚子
で熊本から寄越したものである。まずその全文を掲げることにしよう。 来熊以来は頗る
枯淡の生涯を送り居り候。道後の温泉にて神仙体を草したること、宮島にて紅葉に宿した....
「翻訳の生理・心理」より 著者:神西清
『即興詩人』が書けるというのだろうか。いや、論者の考えているのは鴎外の晩年ちかい
枯淡な味わいの訳文なのであろうが、その淡々として水のごとき行文を支えているものは....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
嫌でぴちぴちして、「ええのう、ええのう。」で意気が昂ったすえには、それはまことに
枯淡閑寂な鰌すくいを踊りぬいて、赤い農民美術の木の盆と共に危くひっくり返りそうに....