染む[語句情報] »
染む
「染む〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
染むの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「外科室」より 著者:泉鏡花
と見れば雪の寒紅梅、血汐《ちしお》は胸よりつと流れて、さと白衣《びゃくえ》を
染むるとともに、夫人の顔はもとのごとく、いと蒼白《あおじろ》くなりけるが、はたせ....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
。まあ、お酒の香がしてねえ、」と手を放すと、揺々となる矢車草より、薫ばかりも玉に
染む、顔酔いて桃に似たり。 「御覧なさい、矢車が酔ってふらふらするわ。」と罪もな....
「朱日記」より 著者:泉鏡花
愛想笑。が、そう云う源助の鼻も赤し、これはいかな事、雑所先生の小鼻のあたりも紅が
染む。 「実際、厳いな。」 と卓子の上へ、煙管を持ったまま長く露出した火鉢へ翳....
「海異記」より 著者:泉鏡花
く、見果てぬ雲に隠るるので。 留守はただ磯吹く風に藻屑の匂いの、襷かけたる腕に
染むが、浜百合の薫より、空燻より、女房には一際床しく、小児を抱いたり、頬摺したり....
「春昼」より 著者:泉鏡花
はあ、青大将かね。」 といいながら、大きな口をあけて、奥底もなく長閑な日の舌に
染むかと笑いかけた。 「何でもなかあねえだよ。彼処さ東京の人だからね。この間も一....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
夢ならぬ顔を上げて、葭簀から街道の前後を視めたが、日脚を仰ぐまでもない。 「身に
染む話に聞惚れて、人通りがもう影法師じゃ。世の中には種々な事がある。お婆さん、お....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
ず一本の菖蒲が町に咲いた、と見た。……その美しい女の影は、分れた背中にひやひやと
染む。…… と、チャンチキ、チャンチキ、嘲けるがごとくに囃す。…… がらがら....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
。 「いらっしゃい。」と……水へ投げて海津を掬う、溌剌とした声なら可いが、海綿に
染む泡波のごとく、投げた歯に舌のねばり、どろんとした調子を上げた、遣手部屋のお媼....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
解捌いて、緑の雫すらすらと、香枕の香に霞むを待てば、鶏の声しばしば聞えて、元結に
染む霜の鐘の音。血る潔く清き身に、唐衣を着け、袴を穿くと、しらしらと早や旭の影が....
「化銀杏」より 著者:泉鏡花
褥の後に御注意あれ。 間広き旅店の客少なく、夜半の鐘声|森として、凄風一陣身に
染む時、長き廊下の最端に、跫然たる足音あり寂寞を破り近着き来りて、黒きもの颯とう....
「政談十二社」より 著者:泉鏡花
心すともなく直視めながら、一歩進み二歩|行く内、にわかに颯と暗くなって、風が身に
染むので心着けば、樹蔭なる崖の腹から二頭の竜の、二条の氷柱を吐く末が百筋に乱れて....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
らと衣の音信。 目前へ路がついたように、座敷をよぎる留南奇の薫、ほの床しく身に
染むと、彼方も思う男の人香に寄る蝶、処を違えず二枚の襖を、左の外、立花が立った前....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
、自分と同一鬢水の…… ――浦子は寝ながら呼吸を引いた。―― ――今も蚊帳に
染む梅花の薫。―― あ、と一声|退こうとする、袖が風に取られたよう、向うへ引か....
「清心庵」より 著者:泉鏡花
薄紫の雲も見ゆ。そよとばかり風立つままに、むら薄の穂|打靡きて、肩のあたりに秋ぞ
染むなる。さきには汗出でて咽喉渇くに、爺にもとめて山の井の水飲みたりし、その冷か....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
には母親があるぜ、と言って深くは咎めず、大目に見てくれたのが附目な位。可哀そうに
染むだろうねと、あねさんがまた塗ってくれる焼酎を、どうぞ口の方へとも何ともいわな....