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柔し
「柔し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
柔しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「路上」より 著者:芥川竜之介
ところが藤沢は存外不快にも思わなかったと見えて、例のごとく無気味《ぶきみ》なほど
柔しい微笑を漂わせながら、
「ええ、そう云えば一番早いかも知れませんね。」と、恬....
「恋を恋する人」より 著者:国木田独歩
の恋人であるがお正は自分の恋人でない、ただ自分の恋に深い同情を寄せて泣いてくれた
柔しサを恋したのだ。そして自分は恋を恋する人に過ぎないと知った。実に大友はお正の....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
誰にも似ない瓜核顔、気高く颯と乗出した処は、きりりとして、しかも優しく、媚かず温
柔して、河野一族第一の品。 嗜も気風もこれであるから、院長の夫人よりも、大店向....
「四日間」より 著者:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ
其処らで…… ぶるぶるとしてハッと気が付くと、隊の伍長のヤーコウレフが黒眼勝の
柔しい眼で山査子の間から熟と此方を覗いている光景。 「鋤を持ち来い! まだ他に二....
「奇妙な遠眼鏡」より 著者:香倶土三鳥
ある所にアア、サア、リイという三人の兄弟がありました。 その中で三番目のリイは一番|温
柔しい児でしたが、ちいさい時に眼の病気をして、片っ方の眼がつぶっていましたので、....
「続獄中記」より 著者:大杉栄
っちの顔の見えないのを幸いに、向うの眼のさめるような着物の赤い色と、白い生々しい
柔しい顔の色とに黙って眼じりを下げていさえすればいいんだ。 西洋の野蛮国たるロ....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
うと思って。ええ、親方、決してその御迷惑を掛けるもんじゃありません。」 で、優
柔しく頬被りを取った顔を、と見ると迷惑どころかい、目鼻立ちのきりりとした、細面の....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
ふと好事な心が、火取虫といった形で、熱く羽ばたきをしたのでございます。 内には
柔しい女房もございました。別に不足というでもなし、……宿へ入ったというものは、た....
「杜子春」より 著者:芥川竜之介
私が大金持になった時には、世辞も追従もしますけれど、一旦貧乏になって御覧なさい。
柔しい顔さえもして見せはしません。そんなことを考えると、たといもう一度大金持にな....
「乳を刺す」より 著者:邦枝完二
来るだけは、働いてみることにしましょうよ」 伝七は四分一の煙管をつかんだまま、
柔しくうなずいた。 留五郎は死体の傍へ寄って、じっとお由利の顔を見守った。他の....
「ある恋の話」より 著者:菊池寛
んだのに過ぎませんでした。その頃まだ十七の真珠のように、清浄な祖母の胸に、異性の
柔しい愛情の代りに、異性の醜い圧迫や怖しい慾情などが、マザマザと、刻み付けられた....
「二葉亭余談」より 著者:内田魯庵
肩へ掛けてはベロベロと頬ぺたを舐めた。「こらこら、そんな所為をする勿」と二葉亭は
柔しく制しながらも平気で舐めさしていた。時に由ると、嬉しくて堪らぬように踵から泥....
「二葉亭四迷」より 著者:内田魯庵
のである。二葉亭が「文学では死身になれない」というは、取りも直さず文学のような生
柔しい事ではとても自分の最大苦悶を紛らす事が出来ないという意味にも解釈される。 ....
「奥州における御館藤原氏」より 著者:喜田貞吉
ならぬのであったのだ。頼朝の勃興に対して京都でかくまでして、この富強なる秀衡を懐
柔し、その後背を攻めしめようと試みたのは当然の所為であったのであろう。『源平盛衰....
「「日本民族」とは何ぞや」より 著者:喜田貞吉
らは各自相攻争して、甚だ憐むべき状態であったのである。そして我が天孫は、彼らを懐
柔し、彼らを撫育し、この豊葦原の瑞穂の国を安国と平らけく治ろしめすべく、降臨し給....