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柩
「柩〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
柩の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「玄鶴山房」より 著者:芥川竜之介
集まった人々は重吉夫婦に悔みを述べた上、白い綸子《りんず》に蔽《おお》われた彼の
柩《ひつぎ》の前に焼香した。が、門を出る時には大抵彼のことを忘れていた。尤《もっ....
「大川の水」より 著者:芥川竜之介
薇《ばら》も百合《ゆり》も、水底《みなそこ》に沈んだような月の光に青ざめて、黒い
柩《ひつぎ》に似たゴンドラが、その中を橋から橋へ、夢のように漕《こ》いでゆく、ヴ....
「葬儀記」より 著者:芥川竜之介
《もんつき》を着た人と話していた。が、そこと書斎との堺《さかい》には、さっきまで
柩《ひつぎ》の後ろに立ててあった、白い屏風《びょうぶ》が立っている。どうしたのか....
「点鬼簿」より 著者:芥川竜之介
ん」の話と云ってはその外に何も残っていない。「初ちゃん」はそれから幾日もたたずに
柩《ひつぎ》にはいってしまったのであろう。僕は小さい位牌に彫った「初ちゃん」の戒....
「宇宙尖兵」より 著者:海野十三
ない車ですが、今夜は一台足りないのでつい並べてしまったのですよ」 十三号車は、
柩車のように黒い姿をして、最前列の左端に停っていた。おそろしく古い型の箱型自動車....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
まらなかった。 が、思い当る……葬式の出たあとでも、お稲はその身の亡骸の、白い
柩で行く状を、あの、門に一人立って、さも恍惚と見送っているらしかった。 ....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
ころなくその旅棺をみると、その上に白い紙が貼ってあって「故奉化州判符女、麗卿之|
柩」としるし、その
柩の前には見おぼえのある双頭の牡丹燈をかけ、またその燈下には人....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
った。 教会には人がいっぱいであった。ヘルマンはようように人垣を分けて行った。
柩はビロードの天蓋の下の立派な葬龕に安置してあった。そのなかに故伯爵夫人はレース....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
康を祝するために古い葡萄酒を飲みながら話したのである。彼はその日の朝、白銀の涙を
柩おおいに散らしながら、十分の敬意を表して、その死人を墓所へ運んだのであった。 ....
「初雪」より 著者:秋田滋
かるに自分はどうか。名ばかりながら今は生きながえらえている哀れなこの五体は、柏の
柩の底に、経帳子にしようと自分が選んでおいたあの絹衣につつまれた白骨をとどめるの....
「女侠伝」より 著者:岡本綺堂
知られた旧家であるから、母の葬式には数百人が会葬している。その大勢のみる前で母の
柩に土をかけたのであるから、他人の死骸なぞを一緒に埋めれば、誰かの口から世間に洩....
「正月の思い出」より 著者:岡本綺堂
秋のはじめからの患いで、歳末三十日の夜に世を去った。明くれば大晦日、わたしたちは
柩を守って歳を送らなければならないことになったのである。こういう経験を持った人々....
「三十年前の島田沼南」より 著者:内田魯庵
きでなかった。その上に間断なくニタニタ笑いながら沼南と喃々私語して行く体たらくは
柩を見送るものを顰蹙せしめずには措かなかった。政界の名士沼南とも知らない行人の中....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
孫通たる奥田義人が代ってその椅子に坐した。奥田は東京市の名市長として最後の光栄を
柩に飾ったが、本来官僚の寵児で、礼儀三千威儀三百の官人|気質の権化であったから、....
「寺町」より 著者:岩本素白
ると、流石に当年文壇の第一人者だけあって、銘旗を立てた葬列は長々と続いて居るが、
柩はその上に高くかつがれた寝棺ではなくて、文豪と謳われた人の亡きがらを載せた一挺....