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棗
「棗〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
棗の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
ぼろ》げな日ざしはありながら、時々雨の降る天気であった。二人は両方に立ち別れて、
棗《なつめ》の葉が黄ばんでいる寺の塀外《へいそと》を徘徊《はいかい》しながら、勇....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
分だけは独逸語なぞ使って、一二、巴里|繁昌記を語った。老紳士の顔は、すこし弾んで
棗の実のような色になった。青年は相変らず、眉根一つ動かさず、孤独でかしこまってい....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
な大きい玉がその懐中から転げ出したので、驚いて更に検査すると、死人の耳にも鼻にも
棗の実ほどの黄金が詰め込んであった。 次も墓あらしの話。 漢の広川王も墓あら....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
ちのような三人には、そこの河岸に莢をたれた皀莢の樹がある、ここの崖の上に枝の細い
棗の樹があると、指して言うことができた。土地の人たちが路傍に設けた意匠もまたしお....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
」 とひとり言って見た。時には彼は路傍の石の上に笠を敷き、枝も細く緑も柔らかな
棗の木の陰から木曾川の光って見えるところに腰掛けながら考えた。 消えうせべくも....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
きをしたものは気に入らず、もっぱら生の肉を啖って、一食ごとに猪の頭や猪の股を梨や
棗のように平らげるので、子や孫らはみな彼をおそれた。城内に入って活き虎を見て帰る....
「半島一奇抄」より 著者:泉鏡花
と、書もつらしい、袱紗包を上に置いて、腰を掛けていた、土耳古形の毛帽子を被った、
棗色の面長で、髯の白い、黒の紋織の被布で、人がらのいい、茶か花の宗匠といった風の....
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
折竹は、舞踏にも加わらず宮苑のなかを歩いていた。スミルナの無花果、ボスラーの
棗椰子、エスコールの葡萄――。近東の名菓がたわわに実っているところは、魔宮か、魅....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
しいのに違いなかった。自動車には丁度僕の外に或理髪店の主人も乗り合せていた。彼は
棗のようにまるまると肥った、短い顋髯の持ち主だった。僕は時間を気にしながら、時々....
「天草四郎の妖術」より 著者:国枝史郎
を瞞く長髯は胸を越して腹まで達し葛の衣裳に袖無羽織、所謂童顔とでも云うのでしょう
棗のような茶褐色の顔色。鳳眼隆鼻。引き縮った唇。其老人の風采は誠に気高いものでし....
「加利福尼亜の宝島」より 著者:国枝史郎
五 チブロン島の海岸に近く、土人部落が立っていた。椰子や芭蕉や
棗の木などにこんもりと囲まれた広庭は彼ら土人達の会議所であったが、今や酋長のオン....
「鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
入れたり、薬局を建出したり、狭い車小屋を造ったりしました。ちょうどその辺に大きな
棗の木と柚の木とがあったので、両方の根を痛めないようにと頼んだのでした。向島での....
「赤げっと 支那あちこち」より 著者:国枝史郎
に陶器の長方形の盆が置いてあり、その上に、金属製の煙灯と、一回分の阿片液を入れた
棗形の小壺が置いてあり、二本の煙斗(即ち阿片の煙管なのだ)が置いてあることに留意....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
私の手にその宝石が残って居る。その翌日白いテントの主人が出て来て乾葡萄、乾桃、乾
棗などを持って来まして私の泊って居る主のラマと交易しました。それは何と交易するか....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
赭い白い顔と手とが鈴なりにぶら下った。その時、大柄ののっぽうの、それでいていつも
棗のような顔をして眼の細い、何か脱俗している好々爺が著て来たのがこれであった。 ....