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楽書
「楽書〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
楽書の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「十円札」より 著者:芥川竜之介
れても――いや、手垢《てあか》ばかりではない。何か大きい10の上に細かいインクの
楽書《らくがき》もある。彼は静かに十円札を取り上げ、口の中にその文字を読み下した....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
が、雨浸に浮び出でて朦朧とお札の中に顕れて活るがごとし。それでも鬼が来て覗くか、
楽書で捏ちたような雨戸の、節穴の下に柊の枝が落ちていた……鬼も屈まねばなるまい、....
「雛妓」より 著者:岡本かの子
懶けものなの」と訊いた。すると逸作は答えた。「違う。僕は人生が寂しくって、こんな
楽書みたいなものの外、スケッチする張合いもないのです」わたくしは訊ね返した「おと....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
次郎法師が思うにつけても、蚊帳越に瞻らるるは床の間を背後にした仄白々とある行燈。
楽書の文字もないが、今にも畳を離れそうで、裾が伸びるか、燈が出るか、蚊帳へ入って....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
合ったのが、火薬庫の長々とした塀になる。――人通りも何にも無い。地図の上へ鉛筆で
楽書したも同然な道である。 そこを――三光坂上の葭簀張を出た――この老人はうら....
「縷紅新草」より 著者:泉鏡花
。腰衣のような幅広の前掛したのが、泥絵具だらけ、青や、紅や、そのまま転がったら、
楽書の獅子になりそうで、牡丹をこってりと刷毛で彩る。緋も桃色に颯と流して、ぼかす....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
紀文を凌駕するものである。 と、大理石の建物にはあるまじき、ひょろひょろとした
楽書の形になって彳む処に、お濠の方から、円タクが、するすると流して来て、運転手台....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
の、路傍の傍示杭だの、気をつけて御覧な、皆この印がつけてあるから。人の知らない、
楽書の中にこの位なことが籠ってるから、不思議だわね。だから世の中は面白いものだよ....
「幸福のうわおいぐつ」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
らず「ミゼラビリ・エチェレンツア」と鼻をならしつづけました。壁のうえにはたくさん
楽書がしてありましたが、その半分は*「ベルラ・イタリア」にはんたいなことばばかり....
「光は影を」より 著者:岸田国士
たらんとす 京野等志は、この詩のようなものを、三度繰り返して読んだ。他愛のない
楽書のようでもあり、弟深志の痛切な叫びのようでもある。この幾行かの呪詛の文句を、....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
「そのかわり、ことづけたいものがあるんだよ、待っておくれ。」 とその○□△を
楽書の余白へ、鉛筆を真直に取ってすらすらと春の水の靡くさまに走らした仮名は、かく....
「ドーヴィル物語」より 著者:岡本かの子
火扉をおろしてまだ深々と眠って居た。扉に白いチョークで、西班牙皇帝の似顔絵が拙く
楽書きされて居る。自国の乱れた政情の間を潜って、時々陛下は茲へ遊びに来られた。陛....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
を凌いで、簀の子の縁に立掛けた板戸に、(この家の裏で鳴いたり時鳥。……)と旅人の
楽書があるのを見て、つい矢立を取って、(このあたり四方八方時鳥、可心。)鳴いてい....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
菖蒲にしては葉が細い。優しい白い杜若、それに姫百合、その床の掛物に払子を描いた、
楽書同然の、また悪く筆意を見せて毛を刎ねた上に、「喝。」と太筆が一字|睨んでいる....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
を起すものは莫迦か気狂いだ、こう思う骨折りさえ頭脳に課さないで塀に書かれた変った
楽書を見過すような気持で、さっさと自分々々の眼の前の仕事に没頭してしまう。だがこ....