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樅
「樅〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
樅の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「河童」より 著者:芥川竜之介
さえぎるものはやはり深い霧ばかりです。もっとも時々霧の中から太い毛生欅《ぶな》や
樅《もみ》の枝が青あおと葉を垂《た》らしたのも見えなかったわけではありません。そ....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
たのであった。
森林は容易に尽きなかった。風雨も依然として止まなかった。空には
樅《もみ》や栂《とが》の枝が、暗い霧を払いながら、悩ましい悲鳴を挙げていた。彼は....
「たね子の憂鬱」より 著者:芥川竜之介
心得、勤勉と節倹、交際、趣味、……」
たね子はがっかりして本を投げ出し、大きい
樅《もみ》の鏡台《きょうだい》の前へ髪《かみ》を結《ゆ》いに立って行った。が、洋....
「デンマルク国の話」より 著者:内村鑑三
。デンマークの富は主としてその土地にあるのであります、その牧場とその家畜と、その
樅《もみ》と白樺《しらかば》との森林と、その沿海の漁業とにおいてあるのであります....
「富士」より 著者:岡本かの子
森林で掩われて鬱蒼としていた。麓の方は樫《かし》の林であり、中腹へかかるとそれが
樅《もみ》の林に代る。頂に近いところは山毛欅《ぶな》となった。山の祖神《おやのか....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
きのことなり。 このときより腐れたる世界の暴力は 入りきぬ、詭計や陥穽も。 山の
樅樹は斧に打たれて倒れ、 作れる船の※は知られざる海を進みゆく。 船夫は風に帆を....
「寒の夜晴れ」より 著者:大阪圭吉
大将」や「チューリップの兵隊さん」が、ピン付けになっていた。部屋の中程には小さな
樅の木の鉢植えが据えられて、繁った枝葉の上には、金線のモールや色紙で造られた、花....
「山と雪の日記」より 著者:板倉勝宣
を下へ下った時に自分達は、ほんとうに驚かされた。山の上の広い雪の原に、五葉の松や
樅がぽつりぽつりと取り残されたようにたたずんで、この白い傾斜のはてに、山が、遠く....
「春の上河内へ」より 著者:板倉勝宣
んだん水が減じて、雪は益々谷を埋めて行った。ハシタ沢で昼食をした。これから白樺も
樅もますます太くなって、雪の静けさが林の中に満ちている。谷川の岸の雪は谷の上をか....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
黒く森に包まれて城の天守は前に聳ゆる。茶店の横にも、見上るばかりの槐榎の暗い影が
樅楓を薄く交えて、藍緑の流に群青の瀬のあるごとき、たらたら上りの径がある。滝かと....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
ある、すぐに手を立てたように石坂がまた急になる、平面な処で、銀杏の葉はまだ浅し、
樅、榎の梢は遠し、楯に取るべき蔭もなしに、崕の溝端に真俯向けになって、生れてはじ....
「伯林の降誕祭」より 著者:岡本かの子
居るのも、他の国のとは自然違う感じです。 道端、街角、寸隙の空地、あらゆる所に
樅の小林が樹ちます。ベルリン郊外の森林から伐り出して来るのです。世界で一番ベルリ....
「初雪」より 著者:秋田滋
うを望むと、サント・マルグリット島とサント・オノラ島が、波のうえにぽっかり浮び、
樅の木に蔽われたその島の背を二つ見せている。 この広い入江のほとりや、カンヌの....
「親ごころ」より 著者:秋田滋
が、ほの暗い、はるか遠方にあるように見えた。道ばたに三本立っている見あげるような
樅の木までが、まるで泣いてでもいるように潤んで見えた。が、呼べど呼べど、応える声....
「白峰の麓」より 著者:大下藤次郎
違で、草刈道を三、四丁迷い込んで跡へ戻った時は、少々|忌々しかった。ところどころ
樅の大木がある。富士はいよいよ高くいよいよ大きく見える。 鰍沢から歩むこと三時....