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樹林
「樹林〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
樹林の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
のまにか乱れた波の物狂わしく立ち騒ぐ沿海の青灰色に変わって、その先に見える暗緑の
樹林はどんよりとした雨空の下に荒涼として横たわっていた。それはみじめな姿だった。....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
っかく》まで行ってまた立停った。遙か下の方からは、うざうざするほど繁り合った濶葉
樹林《かつようじゅりん》に風の這入《はい》る音の外《ほか》に、シリベシ河のかすか....
「高野聖」より 著者:泉鏡花
降るのでもなければ、大海が押被《おっかぶ》さるのでもない、飛騨国《ひだのくに》の
樹林《きばやし》が蛭になるのが最初で、しまいには皆《みんな》血と泥の中に筋の黒い....
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
たんです。多人数一室へ閉籠って、徹夜で、密々と話をするのが、寂とした人通の無い、
樹林の中じゃ、その筈でしょう。 お引受け申して、こりや思懸けない、と相応に苦労....
「海野十三敗戦日記」より 著者:海野十三
宮御所も災厄を受けたが、大宮御所の場合は夜間爆撃とはいえ、月明の中で広大な御苑の
樹林、芝生のほとんど全部が焼けただれるほどに焼夷弾を投下したことは、単なる無差別....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
全国に指を屈するという、景勝の公園であった。 二 公園の入口に、
樹林を背戸に、蓮池を庭に、柳、藤、桜、山吹など、飛々に名に呼ばれた茶店がある。 ....
「木の子説法」より 著者:泉鏡花
り別荘などは影もなくなった。が、狸穴、我善坊の辺だけに、引潮のあとの海松に似て、
樹林は土地の隅々に残っている。餅屋が構図を飲込んで、スケッチブックを懐に納めたか....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
来るように、神へ願懸をすると云って、夜の明けぬ内、外へ出ろ。鼓ヶ嶽の裾にある、雑
樹林の中へ来い。三日とも思うけれど、主人には、七日と頼んで。すぐ、今夜の明方から....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
の突当りの片隅が、学校の通用門で、それから、ものの半町程、両側の家邸。いずれも雑
樹林や、畑を抱く。この荒地の、まばら垣と向合ったのが、火薬庫の長々とした塀になる....
「異国食餌抄」より 著者:岡本かの子
食用蝸牛の養殖は一寸面倒な事業だそうである。その養殖場には日蔭をつくるための
樹林と湿気を呼ぶ苔とが必要である。市場に売り出すものは子供でなくてはならないので....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
と、正面がずッと高縁で、障子が閉って、茅葺ですが本堂らしい。左が一段高く、そこの
樹林の中を潜ると、並んではいますが棟が別で、落葉のままに甍が見えます。階を上ると....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
いい、植物園へ行って、あれから戸崎町の有名な豆府地蔵へ参ろうと、御殿町へ上ると、
樹林|一構、奥深い邸の門に貼札が見えたのです――鷺流狂言、開興。入場歓迎。――日....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
の下の城下に火が起った――こういうと記録じみる――一眸の下に瞰下ろさるる、縦横に
樹林で劃られた市街の一箇処が、あたかも魔の手のあって、森の一束を蒼空へ引上げたよ....
「可愛い山」より 著者:石川欣一
うをしたものだろうと思ったからである。だが、朝の山路はいい。殊に雨に洗われた闊葉
樹林の路を下るのはいい。二人はいつの間にか元気になって、ストンストンと速足で歩い....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
子行汽船の過ぐるに当り、船燈長く波面に揺き、金蛇の隠現する如きを見るのみにして、
樹林無く、屋舎無く、人語馬声無く、一刻一刻、人間界より遠ざかる。唯、蚊の襲来の多....