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樹蔭
「樹蔭〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
樹蔭の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「白蟻」より 著者:小栗虫太郎
、一刻も玩具《おもちゃ》なしには生きて行かれませんわ」 そう云って滝人は、暗い
樹蔭に這いずって行く稚市《ちごいち》の姿を、じっと見守っていた。玩具――愛玩動物....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
かり、撓まぬ膚の未開紅、この意気なれば二十六でも、紅の色は褪せぬ。 境内の桜の
樹蔭に、静々、夫人の裳が留まると、早瀬が傍から向うを見て、 「茶店があります、一....
「春昼」より 著者:泉鏡花
だが一段高く、かつ幅の広い、部厚な敷居の内に、縦に四畳ばかり敷かれる。壁の透間を
樹蔭はさすが、縁なしの畳は青々と新しかった。 出家は、上に何にもない、小机の前....
「紅玉」より 著者:泉鏡花
を左右に振って踊る真似す。 続いて、初の黒きものと同じ姿したる三個、人の形の烏。
樹蔭より顕れ、同じく小児等の間に交って、画工の周囲を繞る。 小児等は絶えず唄う。....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
げた、苦労のほどが偲ばれて、何となく涙ぐまるる。 で、本文通り、黒革縅の大鎧、
樹蔭に沈んだ色ながら鎧の袖は颯爽として、長刀を軽くついて、少し屈みかかった広い胸....
「獏鸚」より 著者:海野十三
ろには長居は無用だ」 帆村は私を促して外へ出た。 外には鮮かな若葉が、涼しい
樹蔭をベンチの上に造っていた。もうすっかり初夏らしい陽気だった。ベンチの上で、帆....
「政談十二社」より 著者:泉鏡花
ながら、一歩進み二歩|行く内、にわかに颯と暗くなって、風が身に染むので心着けば、
樹蔭なる崖の腹から二頭の竜の、二条の氷柱を吐く末が百筋に乱れて、どッと池へ灌ぐの....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
かず、蚊遣の煙の靡くもなき、夏の盛の午後四時ごろ。浜辺は煮えて賑かに、町は寂しい
樹蔭の細道、たらたら坂を下りて来た、前途は石垣から折曲る、しばらくここに窪んだ処....
「化鳥」より 著者:泉鏡花
。 小屋を出て二町ばかり行くと、直ぐ坂があって、坂の下口に一軒鳥屋があるので、
樹蔭も何にもない、お天気のいい時あかるいあかるい小さな店で、町家の軒ならびにあっ....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
で、私も喜んでその申しいでを受けた。 わたしの予感は誤まらなかった。幽霊はもう
樹蔭の路に待ち受けていた。しかも、私たちの行く手を悪魔的に冷笑しているように、前....
「加利福尼亜の宝島」より 著者:国枝史郎
也」 「魏の李恵、雍州に刺史たり、薪を負う者と塩を負う者とあり。同じく担を弛めて
樹蔭に憩う。まさに行かんとして一羊皮を争う。各※背に藉ける物と言う。恵がいわく、....
「奇巌城」より 著者:菊池寛
れが遠去かっていく。少年は洞穴を出てこれを見届けたが、引き返そうとしてはっとして
樹蔭に隠れた。またも五人の男が荷物を持って出てきた。そしてやはり自動車で走り去っ....
「昔のことなど」より 著者:上村松園
いう鴫立沢の西行の絵、芭蕉に連翹などあしらわれた処に鼬の走っている「廃園春色」、
樹蔭に大きな牛が寝て居る「緑蔭放牧」、その牛と牧童の部分を私は写さして貰いました....
「三枚続」より 著者:泉鏡花
、一目|眇として、人少なに、三組の客も、三人のボオイも、正にこれ沙漠の中なる月の
樹蔭に憩える風情。 この間に、愛吉がお夏の来歴を説く一場の物語は、人交もせず進....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
化けては不可ない――今は真昼間だ。見れば川幅も広くなり、鉄橋にかわって、上の寺の
樹蔭も浅い。坂を上った右手に心覚えの古樫も枝が透いた。踞んで休むのは身は楽だけれ....