樹陰[語句情報] » 樹陰

「樹陰〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

樹陰の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
喝采」より 著者:太宰治
私の失言も何も一切合切《いっさいがっさい》ひっくるめて押し流し、まるで異った国の樹陰でぽかっと眼をさましたような思いで居られるこの機を逃さず、素知らぬ顔をして話....
熊の出る開墾地」より 著者:佐左木俊郎
転する。若い農夫は鉄砲を提《さ》げて、熊笹の中を馬車の先へと駈け出した。そして、樹陰《こかげ》から路の上に狙いを据えて馬車を待った。 「ほおら! しっ!」 馭....
名人長二」より 著者:三遊亭円朝
陳述いたして居るところで、実に汗顔の至りだが、国で困難をして出府いたした処、頼む樹陰に雨が漏るで、龜甲屋様の変事、進退|谷まったので已むを得ず推参いたした訳で、....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
樋をつたってあふれるように流れて来ている。そこは半蔵の好きな道だ。その辺にはよい樹陰があったからで。途中で彼は峠の方からやって来る牛方の一人に行きあった。 「お....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
見て、新茶屋から荒町へ出た。旅するものはそこにこんもりと茂った鎮守の杜と、涼しい樹陰に荷をおろして往来のものを待つ枇杷葉湯売りなぞを見いだす。 「どれ、氏神さま....
ウィリアム・ウィルスン」より 著者:佐々木直次郎
古い町は、夢のような、心を鎮めてくれる場所であった。いまでも、私は、空想でそこの樹陰ふかい並木路のさわやかな冷たさを感じ、そこの無数の灌木のかぐわしい芳香を吸い....
唖娘スバー」より 著者:タゴールラビンドラナート
村に住んでいる家々の一人のように、自分の務めをいそしんでいました。両岸には人家や樹陰の深い堤があるので、川の女神は、女王の玉座から踏み出しては家毎の花園の守神と....
小春」より 著者:国木田独歩
蒼天の地に垂れて静かなるを観るなり。日は来たりぬ、われ再びこの暗く繁れる無花果の樹陰に座して、かの田園を望み、かの果樹園を望むの日は再び来たりぬ。 われ今再び....
伯林の落葉」より 著者:岡本かの子
、彼は歩きに歩いた。池のほとりに出た。ここらは樹がまた密生して居た。池をかこんだ樹陰のほの暗さ、池はその周囲の幽暗にくまどられ、明方の月のように静寂な水の面貌を....
善悪両面鼠小僧」より 著者:国枝史郎
無頼漢は、乃信姫を手取り足取りして、宙に持ち上げて駆け出そうとする。途端に老桜の樹陰から、 「待て!」と云う声が響き渡った。深い編笠に顔を隠した一人の武士がつと....
少年連盟」より 著者:佐藤紅緑
ある日、ドノバンはつりざおをもって、コッソリ洞をぬけでて、ニュージーランド河畔の樹陰にこしをおろして糸をたれた。だが、どうしたのかいっこうにつれない、一時間ばか....
チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
ロの方に身を屈げて。 夜を罩めて気持のよいものの音がたゆたい、まっ黒な月桂の樹陰に、暗香それと知られたるヘスペリスの花壇に沿うて立つファウンの大理石の手に弄....
西航日録」より 著者:井上円了
都なり。余は、詩をもって各都の繁華の一端を述ぶ。 巴里夜景 巴里街頭夜色清、樹陰深処電灯明、満城人動春如湧、酌月吟花到五更。 (巴里の夜景 巴里の市街は夜....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
に反射し、人をして日射病を起こさしむるの恐れあり。市外の山麓渓間に入れば、多少の樹陰ありて、涼をいるるに足る。ここより飲用水を運ぶに、布ぶくろを用い、黒色炭のご....
俳句の作りよう」より 著者:高浜虚子
っている傾きがあります。すなわち泉に蟻の落ちてもがいているということに水の清冽、樹陰の近さ等を連想せしめて、むしろ涼しさに属する光景なのでありますが、この句はそ....