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此方
「此方〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
此方の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「青年と死」より 著者:芥川竜之介
仆れて死ぬ。)
男 (笑う)莫迦《ばか》な奴だ。(Aに)怖がることはない。もっと
此方《こっち》へ来るがいい。
A 己は待っている。己は怖がるような臆病者ではない....
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
鼻をぐんと手綱でしごいてまた歩き出した。暗《く》らくなった谷を距《へだ》てて少し
此方《こっち》よりも高い位の平地に、忘れたように間をおいてともされた市街地のかす....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
ずみな先き走りばかりはしていられない筈だ。外部ばかりに気を取られていずに、少しは
此方を向いて見るがいい。そして本当のお前自身なるお前の個性がここにいるのを思い出....
「聖書」より 著者:生田春月
がした。門を出ようとして、横の方を見ると台所の窓のところから、例の女中さんの顔が
此方を覗いていた。僕は玄関に立っている主人に云う風をして、「さようなら」と、一寸....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
行火を跨いで、どぶろくを飲んでいた、私を送りの若い衆がな、玉代だけ損をしやはれ、
此方衆の見る前で、この女を、海士にして慰もうと、月の良い晩でした。 胴の間で着....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
でしまいたいほどでしたよ。」 大袈裟なのを笑いもしない女房は、その路連、半町|
此方ぐらいには同感であったらしい 「ええええお易い事。まあ、ごじょうだんをおっし....
「犬」より 著者:アンドレーエフレオニード・ニコラーエヴィチ
お前は可哀い眼付をして居る。お前の鼻梁も中々美しいよ。可哀がって遣るから、もっと
此方へおいで」といった。 レリヤはこういって顔を振り上げた。犬を誉めた詞の通り....
「伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
ぬか、何ぞお食りなされて下さりまし。」 伊勢国|古市から内宮へ、ここぞ相の山の
此方に、灯の淋しい茶店。名物|赤福餅の旗、如月のはじめ三日の夜嵐に、はたはたと軒....
「悪獣篇」より 著者:泉鏡花
て描いたよう。 向う側は、袖垣、枝折戸、夏草の茂きが中に早咲の秋の花。いずれも
此方を背戸にして別荘だちが二三軒、廂に海原の緑をかけて、簾に沖の船を縫わせた拵え....
「梵雲庵漫録」より 著者:淡島寒月
た馬の首だけを括り付け、それに跨ったような格好で鞭で尻を叩く真似をしながら、彼方
此方と駆け廻る。それを少し離れた処で柄の付いた八角形の眼鏡の、凸レンズが七個に区....
「一利己主義者と友人との対話」より 著者:石川啄木
眠ったっけが、今夜は何を聞いて眠るんだろうと思いながら行くんだ。初めての宿屋じゃ
此方の誰だかをちっとも知らない。知った者の一人もいない家の、行燈か何かついた奥ま....
「良夜」より 著者:饗庭篁村
れも仰天し、「実は伯父ご様の御文中にも若干の学資を持たせ遣したりとあれば、それを
此方へ御預かり申さんとは存ぜしが、金銭の事ゆえ思召す所を憚かりて黙止たりしが残念....
「瘠我慢の説」より 著者:石河幹明
出ずるよう江戸に浅田宗伯という名医ありと聞く、ぜひその診察を乞いたしとの請求に、
此方にては仏公使が浅田の診察を乞うは日本の名誉なりとの考にて、早速これを許し宗伯....
「活人形」より 著者:泉鏡花
墓石を押し寄せて、その上に乗りて伸び上り、窓の戸を細う開きて差覗けば、かの婦人は
此方を向きて横様に枕したれば、顔も姿もよく見えたり。「やあ! と驚きの余り八蔵は....
「大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
ますが、植木やさんは、少し痲の気でお小用が永いですから、急に止める訳にもいかず、
此方を振り反って見て、「おいおい、そう引くな、少し待って呉れ」と言ってたというの....