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「歯黒〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

歯黒の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
さきです。ちゅうちょなく伝六に導かれていったその姿を見迎えながら、落としまゆにお歯黒染めた、まだみずみずしいうばざくらの若後家が声をひそめると、もっけもないこと....
」より 著者:島崎藤村
働いた。時々隣の叔母さんは粗末な垣根のところへやって来て、お雪に声を掛けたり、お歯黒の光る口元に微笑を見せたりした。下婢は酷い荒れ性で、皸の切れた手を冷たい水の....
伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
抜けの出来る茶屋は、昼寝の半ばらしい。どの座敷も寂寞して人気勢もなかった。 御歯黒蜻蛉が、鉄漿つけた女房の、微な夢の影らしく、ひらひらと一つ、葉ばかりの燕子花....
旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
びょうぶ》を廻《めぐ》らし黒ぬりの耳盥《みみだらい》を前におき、残っている歯をお歯黒で染めた。銭亀《ぜにがめ》ほどのわりがらこに結って、小楊子《こようじ》の小々....
旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
ら、色の浅黒い、顔の長いひっつめのいちょうがえしに結った、額に青筋の出ている、お歯黒をつけた、細二子《ほそふたこ》の袷《あわせ》に黒い帯をひっかけ(おかみさん結....
旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
たてられた。 兄さんが死んで、おきねさんが三ツ輪に結って、浅黄がのこをかけてお歯黒をつけて、どこかみだらな顔つきになったが、それも見えなくなった。骸骨《がいこ....
旧聞日本橋」より 著者:長谷川時雨
、百代と二人ならんだ姿をお見詰めになって――たしかにお目にとまったのだが、まだお歯黒をおつけになって、お童様《ちごさま》だったから――なんて話もきくともなくきいた。....
アド・バルーン」より 著者:織田作之助
には、十吉ちゃんは新ちゃんと違て、継子やさかい、えらい目に会わされて可哀相や。お歯黒をした気味の悪い口を私の耳に押しつけながらもう涙ぐみ、そして私がわけの判らぬ....
次郎物語」より 著者:下村湖人
りのくせに、お浜にあいづちばかりうっていてさ。」 「へへへへ。」お糸婆さんは、お歯黒のはげた歯をむき出して、変な笑いかたをする。 その時、奥の方から赤ん坊の泣....
幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
て大いに繁昌をした店があり、直ぐ隣りに「三太郎ぶし」といった店があった。これはお歯黒をつけるには必ず必要の五倍子の粉を売っていた店で、店の中央に石臼を据えて五倍....
唇草」より 著者:岡本かの子
こすり取って、竿を眼にうけさせ、莢の破り口を逆にしてとんとんとはたいた。微かにお歯黒をつけた蚕豆の粒の一つと一緒に繊弱い豆の虫が一匹落て出た。 虫の早稲の米粒....
艶色落語講談鑑賞」より 著者:正岡容
いんです。誰かに鉄漿の落ちない粉を買わせてきてくださいません?」 鉄漿とは、お歯黒。昔は、歯を黒く染めることが、女性の一つの身だしなみだったのだ。 ※誰に見....
里の今昔」より 著者:永井荷風
吉原田圃の全景を眺めるには廓内京町《かくないきょうまち》一、二丁目の西側、お歯黒溝《はぐろどぶ》に接した娼楼《しょうろう》の裏窓が最もその処《ところ》を得て....
ロザリオの鎖」より 著者:永井隆
名誉欲、優越欲、それからその知的財を資本にひともうけしようとする物欲などが髪白く歯黒く血の青くなった赤はげ頭の中に燃え上がったのである。 しかも彼らは朝飯のあ....
雷門以北」より 著者:久保田万太郎
それよりも、そうした木立の間から山谷堀の方をみるのがいい。――むかしながらの、お歯黒のように澱んだ古い掘割の水のいろ。――が、それにつづいた慶養寺の墓地を越して....