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殉情
「殉情〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
殉情の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
に、健康らしいばら色を帯びた容貌《ようぼう》や、甘すぎるくらい人情におぼれやすい
殉情的な性格は、葉子に一種のなつかしさをさえ感ぜしめた。しかし実際顔と顔とを向か....
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
。人とは言うまい、犬とでも、花とでも、塵とでもだ。孤独に親しみやすいくせにどこか
殉情的で人なつっこい私の心は、どうかした拍子に、このやむを得ない人間の運命をしみ....
「仮装人物」より 著者:徳田秋声
雑で矛盾だらけの環境と運命のせいで、真実は思いにまかせぬ現実の生活のために、弱い
殉情そのものが無残に虐げられているのだと思われてならなかった。いわば彼女の
殉情と....
「道徳の観念」より 著者:戸坂潤
ると、捕虜を奴隷にする代りに殺して了うことは、禁じられる。殉死は往々最高の道義的
殉情の発露だと説明されるが、之は家臣という奴隷が一つの私有財産であったという所有....
「葉」より 著者:太宰治
あった。青い稲田が一時にぽっと霞んだ。泣いたのだ。彼は狼狽えだした。こんな安価な
殉情的な事柄に涕を流したのが少し恥かしかったのだ。 電車から降りるとき兄は笑う....
「概念と心其もの」より 著者:宮本百合子
生を完く相対的に観て行こうとする傾向である。 女性がとかく陥り易い空疎な主義や
殉情的な甘さから脱して、人生をその儘 matter of fact として描いて....
「有島さんの死について」より 著者:宮本百合子
そうして有島さんの最近の作物「二つの心」などを拝見しまして、あの中にある弱い男の
殉情的な気持などを観ると、よくその中から今度のことが思い合わされるように思われます。 〔一九二三年七月〕....
「有島武郎の死によせて」より 著者:宮本百合子
不可解の点があり、それを理論的に批評するに困難がある。然し、彼が、性格的にあれ程
殉情的なところと、理想主義、殆どストイックなところとのあったことに、今度のパニッ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
ま》きながら朝霧の純情に殉じたものだ。死して魂魄《こんぱく》となっても、女はその
殉情に満足を感じたに相違ない。つまり、生きて遂げられぬ恋が、死して円満に成就《じ....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
れた穽《あな》から左膳を引きあげるために!
魔女の辛辣《しんらつ》と江戸っ児の
殉情を兼ね備えている櫛まきの姐御には相違ないが、どっちもお藤本然の相《すがた》と....
「『出家とその弟子』の追憶」より 著者:倉田百三
高を退き、病いを養いつつ、海から、山へ、郷里へと転地したり入院したりしつつ、私は
殉情と思索との月日を送った。そして二十七歳のときあの作を書いた。 私の青春の悩....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
々の山や海を目の前にして、思いに堪えずにいる友の姿を思い浮かべながら…… だが
殉情な友の忍耐の勝つ日が来た。その後友が海軍を止めて、牧師となったころ、私も病ん....
「自分を鞭打つ感激より」より 著者:小川未明
せん。常に、自分を鞭打って止まざる至高の感激が、何よりも美であり、この美に対する
殉情的精神は虚名と虚偽を忘れしめるからです。 いま、私達と同じように、芸術を見....
「読んできかせる場合」より 著者:小川未明
ば、共に悲しみ、共に喜ぶことだけは、いかなる他人が寄せるよりも、もっと深く、且つ
殉情的であるかは、すでにお母さん達が、自分の子供等についてよく知っていられる筈で....
「雷門以北」より 著者:久保田万太郎
敢ない「造花」である。……わたしにいわせれば、畢竟それは「新しい浅草」の膚浅な「
殉情主義」の発露に外ならない…… が、一方は衰えて一方はさかえた。――いつのこ....