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「残照〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

残照の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
太虚司法伝」より 著者:田中貢太郎
寝るよりはよっぽど好いと思った。大異は林の方へ往った。 林の外側に並んだ幹には残照が映って、その光が陽炎のように微赤くちらちらとしていたが、中はもう霧がかかっ....
田舎教師」より 著者:田山花袋
みることに興味をもって、琴の六段や長唄の賤機などをやってみることがある。鉄幹の「残照」は変ロ調の4/4でよく調子に合った。遅くまでかかって熱心に唱歌の楽譜を浄写....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
った。 夕である。 日はすでに河内の金剛山と思うあたりに沈んで、一抹殷紅色の残照が西南の空を染めて居る。西|生駒、信貴、金剛山、南吉野から東|多武峰初瀬の山....
未来の天才」より 著者:豊島与志雄
それは朝から妙にむし暑い日だったが、夕方になって急に冷々としてきて、ぱっと明るい残照の後すぐに暗くなってしまった。かく薄暮の明るみのない慌しい夕を、私は薄気味悪....
月明」より 著者:豊島与志雄
防をなしていて、その向うに青々とした水田が、はるか海岸の砂丘まで連る。 華かな残照が西の空に残っていた。海を渡り稲田の上を渡ってくる風が、昼間の暑気を吹き払っ....
反抗」より 著者:豊島与志雄
かされた。 二十九 西の空に屯《たむろ》してる雲のために華かなるべき残照が遮られてる、ほろろ寒い佗しい秋の夕暮だった。周平は足を早めて下宿の方へ帰り....
道化役」より 著者:豊島与志雄
の通風孔みたいに思われるのだ。殊に夕方がよかった。太陽は建築物の肩に隠れて、その残照が明るく河面に漂い、油をぬったような空と水との反映を受けて、微妙な紫じみた雰....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
そ》かな正面が広げられていて、その退屈そうな小窓には、夕陽《ゆうひ》が生々とした残照を投げていた。廃兵院の広地の奥、その濠《ほり》や高い壁の後ろ、厳粛な寂寞《せ....
田園の幻」より 著者:豊島与志雄
高値に買わせられた。東京からのお客さんには、へんな特権があるらしい。 日没後の残照の中に夕靄がたなびき、靄が薄らぐと共に明るみも薄らぎ空の星が光りを増してくる....
死因の疑問」より 著者:豊島与志雄
で、そして胸に両手をあて、じっと立っているのです。もう陽は沈んでいましたが、その残照を受けてる赤い雲が、千切れ千切れに、ゆるやかに西空に流れていました。その雲を....
秦の憂愁」より 著者:豊島与志雄
で、或る夕方、虎ノ門の近くを歩いていると、梅子に行きあった。 夕方といっても、残照の澄んだ、よく見通しのきく一刻だった。梅子は一人で、街路の向う側を歩いてきた....
波多野邸」より 著者:豊島与志雄
で飲み、それから二階の室で書画を見、次いで焼け野原に夕日の沈むのを窓から眺めた。残照が消えてしまった時、二人の肩は相接していた。それをどちらも避けようとしなかっ....
高尾ざんげ」より 著者:豊島与志雄
。口も開けないであるのよ。」 二三杯のんで、そして二人で海辺へ散歩に出ました。残照がまだ明るく海の上に映えて、初島がたいへん近く見え、その先は茫漠と暮れかけていました。....
チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
るジヤニイノに。)だがこの市が、今下でどんな様子だか見てごらんよ。夕|靄と金色の残照に包まれ、薔薇色した黄、明るい鼠、その裾は黒い陰の青、うるおいのある清らかさ....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
私たちの高麗丸のスクリュウが響く。機関が熱る。帆綱が唸る。通風筒の耳の孔が僅かに残照の紅みを反射する。 あ、書くのを忘れた。あの後、私は専用の雪白の湯槽の中に....