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「母衣〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

母衣の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
婦系図」より 著者:泉鏡花
ねて来たろう。帰りがけに、飯田町から見附を出ようとする処で、腕車を飛ばして来た、母衣の中のがそれだッたって、矢車の花を。」 と言いかけて、床の間を凝と見て、 ....
妖術」より 著者:泉鏡花
が霞に包まれたようになって、洋傘はびしょびしょする……番傘には雫もしないで、俥の母衣は照々と艶を持つほど、颯と一雨|掛った後で。 大空のどこか、吻と呼吸を吐く....
海異記」より 著者:泉鏡花
うもんですか。」 「お浜ッ児にも内証だよ。」 と密と伸上ってまた縁側から納戸の母衣蚊帳を差覗く。 「嬰児が、何を知ってさ。」 「それでも夢に見て魘されら。」 ....
吉原新話」より 著者:泉鏡花
紋坂あたりを一つ行く俥の音の、それも次第に近くはならず、途中の電信の柱があると、母衣が凧。引掛りそうに便なく響が切れて行く光景なれば、のべの蝴蝶が飛びそうな媚か....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
面当で隠されてあった。そして、背には、軍配|日月の中央に南無日輪摩利支天と認めた母衣を負い、その脇に竜虎の旗差物が挾んであった。しかし、その一列のうちに注目すべ....
川中島合戦」より 著者:菊池寛
りの武田|菱の前立打ったる兜をいただき、黒糸に緋を打ちまぜて縅した鎧を着、紺地の母衣に金にて経文を書いたのを負い、鹿毛の馬に跨り采配を振って激励したが、形勢非と....
天守物語」より 著者:泉鏡花
丸柱の傍に鎧櫃を据えて、上に、金色の眼、白銀の牙、色は藍のごとき獅子頭、萌黄錦の母衣、朱の渦まきたる尾を装いたるまま、荘重にこれを据えたり。 ――侍女等、女童と....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
起返った、と思うとの。……(爺様、あれあれ、)」 その時、宰八川面へ乗出して、母衣を倒に水に映した。 「(手毬が、手毬が流れる、流れてくる、拾ってくれ、礼をす....
第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
露の日は、目も眩むように暑かったと云った。 主人が主人で、出先に余り数はなし、母衣を掛けて護謨輪を軋らせるほど、光った御茶屋には得意もないので、洋傘をさして、....
縁結び」より 著者:泉鏡花
頂上の広場になる。かしこの回向堂を志して、ここまで来ると、あんなに日当りで、車は母衣さえおろすほどだったのが、梅雨期のならい、石段の下の、太鼓橋が掛った、乾いた....
露肆」より 著者:泉鏡花
そうな婆さんの黄色い襟も交ったが、男女合わせて十四五人、いずれも俥で、星も晴々と母衣を刎ねた、中に一台、母衣を懸けたのが当の夜の縁女であろう。 黒小袖の肩を円....
星女郎」より 著者:泉鏡花
もぐらぐらとなっていて、他愛がありません。止むことを得ず、暮れかかる峰の、莫大な母衣を背負って、深い穴の気がする、その土間の奥を覗いていました。……冷こい大戸の....
春昼後刻」より 著者:泉鏡花
よ。」 獅子が並んでお辞儀をすると、すたすたと駈け出した。後白浪に海の方、紅の母衣翩翻として、青麦の根に霞み行く。 さて半時ばかりの後、散策子の姿は、一人、....
三枚続」より 著者:泉鏡花
お納戸の、あの脱いであった羽織を被ておいでなすった。襦袢の袖口に搦んだ白い手で、母衣の軸に掴まって、背中を浮かすようにして乗ってましたっけ、振向いて私がお米を負....
式部小路」より 著者:泉鏡花
泣ッ面を御覧じろ。」 と、あわや打据えんとしつつ前後を見た無法ものは、フトその母衣の中に目を注いだ。 これより前、湯屋の坂上の蒼空から靉靆く菊の影の中、路地....