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水苔
「水苔〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
水苔の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
黒の暗のなかで折竹に声をかけた。腐土のにおいと湿った空気。ぬるっと、触れた手には
水苔がついてくる。と、遠くないところから折竹が答える声。 「ここはね、いわば地....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
ていたが、其月の宅は広くなかった。門のなかには二十坪ほどの庭があって、その半分は
水苔の青い池になっていた。玄関のない家で、女中部屋の三畳、そのほかには主人が机を....
「浮動する地価」より 著者:黒島伝治
がわくと白熱燈が使われた。石油を撒き、石油ランプをともし、子供が脛まで、くさった
水苔くさい田の中へ脚をずりこまして、葉裏の卵を探す代りに。 苅った稲も扱きばし....
「千鳥」より 著者:鈴木三重吉
れる。 「また浮きますよ」と藤さんがいう。指すところをじっと見守っていると、底の
水苔を味噌汁のように煽てて、幽かな色の、小さな鮒子がむらむらと浮き上る。上へ出て....
「病室の花」より 著者:寺田寅彦
た。同じ日に甥のNが西洋種の蘭の鉢を持って来てくれた。代赭色の小鉢に盛り上がった
水苔から、青竹箆のような厚い幅のある葉が数葉、対称的に左右に広がって、そのまん中....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
夜河をわたる。
広い河原だ。
黒い石が累々《るいるい》と重なりつづいて古びた
水苔で足がすべる。蛇籠《じゃかご》を洗う水音が陰々と濡れそぼれた夜の底をながれて....
「蓮」より 著者:豊島与志雄
寸くらいの大きさにしかならず、それもやがて縁の方から枯れていった。そしてただ油と
水苔とだけが、鉢の中一杯に漂い浮び、泥の中からは泡が立ち、物の腐爛した臭気が発散....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
物の滑らかな皮膚が、何かの膀胱のように見えたり、海草は紫ばんだ脱腸を垂らし、緑の
水苔で美しく装われている暗礁も、まるで、象皮腫か、皺ばんだ瘰癧のように思われるの....
「キャラコさん」より 著者:久生十蘭
って深い瀬《せ》へ出た。水の中へ手をいれて川底の石をひろって仔細に眺めて見ると、
水苔に魚が突ついた口のあとがついている。 「うまい工合ね。このぶんなら、たしかに....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
送って、念のため、というよりは気休めにその古井戸を浚《さら》わせてみると、真青に
水苔をつけた女の櫛が一つ、底の泥に塗れて出て来たという。 三 「器用....
「平ヶ岳登攀記」より 著者:高頭仁兵衛
量がすこぶる多くて、また山側の崩壊が稀で洪水も少ないと見えて、岩石に稜角がなくて
水苔が生じていて、粗面質の岩石でも往々に足を辷らして、危険千万であるから歩行に非....
「台川」より 著者:宮沢賢治
多少|失望《しつぼう》だ。岩は何という円くなめらかに削《けず》られたもんだろう。
水苔《みずごけ》も生《は》えている。滑《すべ》るだろうか。滑らない。ゴム靴の底《....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
るであろう。が、あのじめじめした猿江の墓地は未だに僕の記憶に残っている。就中薄い
水苔のついた小林平八郎の墓の前に曼珠沙華の赤々と咲いていた景色は明治時代の本所以....
「釜沢行」より 著者:木暮理太郎
明るい感じのする所だ。暗緑に沈んだ水は音も立てずするすると辷って行く。岩の肌には
水苔が滑に生えて、其上を歩くと人までがよく辷る。 平な河床は然し長く続かなかっ....
「秋の鬼怒沼 」より 著者:木暮理太郎
、私達は鬼怒沼ヶ原の一端に跳り出た。そして足に任せて原の中を歩き廻った。 原は
水苔の床らしく踏むとじめじめしている。東寄りの方には矮小な黒檜白檜の一叢が沙漠の....