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氷る
「氷る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
氷るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カインの末裔」より 著者:有島武郎
き出した。日が傾きはじめると寒さは一入《ひとしお》に募って来た。汗になった所々は
氷るように冷たかった。仁右衛門はしかし元気だった。彼れの真闇《まっくら》な頭の中....
「海異記」より 著者:泉鏡花
にのみ耳を澄ませば、生憎待たぬ時鳥。鯨の冬の凄じさは、逆巻き寄する海の牙に、涙に
氷る枕を砕いて、泣く児を揺るは暴風雨ならずや。 母は腕のなゆる時、父は沖なる暗....
「電気看板の神経」より 著者:海野十三
えされているうちに、突如として大惨劇の黒雲が、この家の上に舞い下った。それは月も
氷るという大寒が、ミシミシと音をたてて廂の上を渡ってゆく二月のはじめの夜中の出来....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
たのを見たことがあるまい。淡い緑色を帯びて、乳らしい香もなくなる。ここでは鶏卵も
氷る。それを割れば白味も黄身もザクザクに成っている。台処の流許に流れる水は皆な凍....
「小説 不如帰 」より 著者:徳冨蘆花
通り来て、むかしの不快は薄らぐともなく痕を滅し、佐世保病院の雨の日、威海衛港外風
氷る夜は想いのわが家に向かって飛びしこと幾たびぞ。 一年ぶりに帰りて見れば、家....
「湯島の境内」より 著者:泉鏡花
寒さに降る雨も、暮れていつしか雪となり、 仮声使、両名、登場。 ※上野の鐘の音も
氷る細き流れの幾曲、すえは田川に入谷村、 その仮声使、料理屋の門に立ち随意に仮色....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
ンとも。」 で、わざと慰めるように吻々と笑った。 人の情に溶けたと見える……
氷る涙の玉を散らして、はっと泣いた声の下で、 「はい、願掛けをしましても、塩断ち....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
酒の夢を見て帰ったという消息をもまことしやかに伝える者もある。或いはまた月光霜に
氷る夜半、霜よりも寒く、薄《すすき》よりも穂の多い剣の林の中を、名にし負う新撰組....
「鳴雪自叙伝」より 著者:内藤鳴雪
かな 釜に湧く風邪の施薬や小春寺 冬の夜や小犬啼きよる窓明り 僧定に入るや豆腐の
氷る時 耳うとき嫗が雑仕や冬ごもり 書を積みし机二つや冬ごもり 門前の籾を踏まる....
「白い花赤い茎」より 著者:田中貢太郎
れの長い口元に力を入れていた。鬼婆と云うことが寡婦の頭を走った。彼女は総身の肉が
氷るように思った。彼女は一刻も早く山を越したくなった。 「ではお婆さん、此所に六....
「言葉の不思議」より 著者:寺田寅彦
ほり」の音便読みに近い。英語の cold は冷肉(コールミート)のコールである。
氷るに近い。朝鮮語で冬は「キョーウル」である。ヘブライ語の寒さも「コール」である....
「駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
どった。冬の夜は長くまだ十時を過ぎないけれども往来には人影が杜絶えて、軒燈の火も
氷るばかりの寒さである。 長崎の水谷造船所と九州鉄道の労働者間にこんどよほど強....
「鴎外の思い出」より 著者:小金井喜美子
後御兄さまより御便りはありしや、いかゞ。あらば御聞せ下され。 其まゝに千代の鏡と
氷るなり 結びあまりし今朝の薄氷 大きみの千世の例と老がつむ 心....
「明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
れになった。おまけに木戸前に一時間あまりも雨に晒されて立ちつづけていたので、骨も
氷るばかりの寒さであったことを今でも身にしみて覚えている。また一度はやはり雨を冒....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
りながらでのうては面白く窓|撲つ音を聞きがたしとの贅沢いうて、木枯凄まじく鐘の音
氷るようなって来る辛き冬をば愉快いものかなんぞに心得らるれど、その茶室の床板削り....