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「氷雨〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

氷雨の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
工場細胞」より 著者:小林多喜二
の想っている相手が誰か、お君は云わなかった。 その夏は暑かった。しかし秋は雨と氷雨が代り番に続いて、港街が荒さんだ。冬がくると、秋のあとをうけて、今度は天候が....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
て、雷雨の時などに降る霰よりも大粒なやつを木小屋の板屋根の上へも落とした。やがて氷雨の通り過ぎて空も明るくなったころ、笹屋庄助と小笹屋勝之助の両名が連れだってそ....
冬日記」より 著者:原民喜
ら間もなく、あの恐しい朝(十二月八日)がやって来たのだった。気を滅入《めい》らす氷雨《ひさめ》が朝から音もなく降りつづいていて、開け放たれた窓の外まで、まるで夕....
丹下左膳」より 著者:林不忘
は、寝てか覚《さ》めてか……泰軒と栄三郎期せずして呼吸《いき》をのんだ。 夜の氷雨《ひさめ》がシトシトと闇黒を溶かして注いでいる。樹々の葉が白く光って、降り溜....
別れの辞」より 著者:豊島与志雄
つ人形を買っていってやることだった。一月末の寒中で、北風が吹き荒れることもあり、氷雨が降ることもあった。然し宮崎は、一日も欠かさず、人形を持って病院を見舞った。....
あなたも私も」より 著者:久生十蘭
良ふみ子が重々しいようすであがってきた。無意味な失費を厭《いと》うので、新橋から氷雨《ひさめ》に降られながら歩いてきたのらしい。茶のオーヴァ・コートが濡れしおれ....
褐色の求道」より 著者:岡本かの子
もなく皿を運んで来た。私は程よく燃えているストーヴに暖められながら、いつの間にか氷雨が降っている硝子の外の景色を眺めながら悠っくりフォークを動かしていた。停車場....
ノンシャラン道中記」より 著者:久生十蘭
りもち》をついた。 五、寝起きはとかく不機嫌な巴里の冬空。相も変らず霧のような氷雨《ひさめ》は大気を濡らし、共同便所の瓦斯《ガス》灯の舌もまだ蒼白く瞬いている....
ノンシャラン道中記」より 著者:久生十蘭
に激昂し、「ニースなんぞ、いやなこった!」と、宣言したにより、やむなくコン吉は、氷雨窓《ひさめまど》を濡らす巴黎《パリ》の料亭において七面鳥と牡蠣《かき》を喰《....
釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
一 がらり、紅葉《もみじ》湯の市松格子が滑ると、角の髪結|海老床《えびどこ》の親分甚八、蒼白い顔を氷雨《ひさめ》に濡らして覗き込んだ。 「おうっ、親分は来てやしねえかえ、釘抜の親....
アッタレーア・プリンケプス」より 著者:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ
ってアッタレーアは、やっとあいた穴からぐいと頭をつき出したのです。みぞれまじりの氷雨が、しとしとと降っておりました。身を切るような北風が、ちぎれちぎれの灰色の雨....
不在地主」より 著者:小林多喜二
赤いうちに!」 寒い雨が降っていた。――もう冬が近い。そしてそれが知らない間に氷雨になっていた。さすがの(実際、さすがの、と健には思われた。)小作人もありあり....
青春の息の痕」より 著者:倉田百三
数日の間病友と病友との間に生じた争いを調停するために祈り、かつ働きました。そして氷雨の降る夜を車に乗って奔走もしました。そしてついに平和をもたらすことができまし....
知々夫紀行」より 著者:幸田露伴
もあらぬなるべし。 かくてくず湯も成りければ、啜る啜るさまざまの物語する序に、氷雨塚というもののこのあたりにあるべきはずなるが知らずやと問えば、そのいわれはよ....
古事記」より 著者:太安万侶
ないでも還る時に殺して還ろう」と仰せられて、お登りになりました。そこで山の神が大氷雨《だいひようう》を降らしてヤマトタケルの命を打ち惑わしました。この白い猪に化....