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汐時
「汐時〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
汐時の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
から、立続けに死霊、怨霊、生霊まで、まざまざと顕れても、凄い可恐いはまだな事――
汐時に颯と支度を引いて、煙草盆の巻莨の吸殻が一度|綺麗に片附く時、蚊遣香もばった....
「河明り」より 著者:岡本かの子
。 亭の前の崖下は生洲になっていて、竹笠を冠った邦人の客が五六人釣をしている。
汐時のすこし湿っぽい畳の小座敷で、社長は無事見学祝いだとか、何とか云っては日本酒....
「思想と風俗」より 著者:戸坂潤
中はもはや決して、あれ程易々として社会に乗り出すことは出来ないのだ。その時期は、
汐時は、もう過ぎたように見える。 この頃の学生は勉強しなくなった、気魄が衰えた....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
して、力を落す方がござりますので、こうやって近間に店を出しておりますから、朝晩|
汐時を見ては拾っておきまして、お客様には、お土産かたがた、毎度|婆々が御愛嬌に進....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
沿って、蘆の根へ染み込むように、何処となく隠れて、田の畦へと落ちて行く。 今、
汐時で、薄く一面に水がかかっていた。が、水よりは蘆の葉の影が濃かった。 今日は....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
なわち連獅子に骨身を絞ったというのに――上の姉のこのお妻はどうだろう。興|酣なる
汐時、まのよろしからざる処へ、田舎の媽々の肩手拭で、引端折りの蕎麦きり色、草刈籠....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
》の戸を締めきってしまいました。 門の外で体《てい》よく食い留められた連中は、
汐時《しおどき》がよかったせいか、強《た》って見せろと乱入する者もなく、暴動を起....
「晩夏」より 著者:堀辰雄
燃え残りの薪を拾って、湖水の方へほうった。それは水まで届かないで砂地に落ちた、引
汐時《ひきしおどき》だったので、水はずっと向うまで引いていたのだった。 私もそ....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
ぼれた祝場を廻り済して、行列は、これから川向の演芸館へ繰込むのの、いまちょうど退
汐時。人は一倍群ったが、向側が崖沿の石垣で、用水の流が急激に走るから、推されて蹈....
「徒然草の鑑賞」より 著者:寺田寅彦
段)修身治国の道を説いたり、ばくち打の秘訣(第百二十六段)を引いて物事には機会と
汐時を見るべきを教えている。この他にも賭事や勝負に関する記事のあるところを見ると....
「幕末維新懐古談」より 著者:高村光雲
、並木へと行けど、それも駄目なり。やむをえず河岸へ出たものだ。ところがちょうど引
汐時であったから、それへ荷物をウーンと出したものだ。すると、また上潮になって来て....
「山吹」より 著者:泉鏡花
う。ついこの間もかぜを引いて三日寝ました。水をのみに行きます廊下で、「今度などが
汐時じゃ。……養生と言って実家へ帰したら。」姑たちが話すのを、ふいに痛い胸に聞い....
「日和下駄」より 著者:永井荷風
の人身攻撃から段々に強面《こわもて》の名前を売り出し懐中《ふところ》の暖くなった
汐時《しおどき》を見計《みはから》って妙に紳士らしく上品に構えれば、やがて国会議....
「深川の唄」より 著者:永井荷風
える古風な忍返《しのびがえし》をつけた黒板塀の影までをはっきり映している。丁度|
汐時《しおどき》であろう。泊っている荷舟《にぶね》の苫屋根《とまやね》が往来より....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
にちらと見せたが、すぐ復た沈んでしまった。左手は間近い飯縄の原の瑞々しい緑が、引
汐時の干潟のように刻々に展開して、花野の露にあこがれる大きな蝶のような白い雲の塊....